みーちんぐ

ボスに指定された時刻は午後三時.論文の初稿がどんな目に合わされるかは同僚から耳にタコができまくるほど聞かされている.内心ビクビク,膝ガクガク*1の状態でボスの部屋へ入る.ボスの第一声たるや…


"You did quite a good job as a first manuscript."


全身からヘナヘナと力が抜けたヨ,ほっ….しっかし,ワタクシがボスとミーティングをするといつも穏やかな雰囲気なのは何でか知らん.同僚が論文描くときにボスとミーティングするときなんて殆どケンカで,ドアの向こうから双方のyellingが聞こえまくりなのになあ.


それにしても,である.


下書きは今朝送ったところで,あれやこれやと忙しいボスは,恐らく一回目を通したダケのハズだ.それなのに,ワタクシが書いた内容の全てを理解している.「このセクションとこのセクションは入れ替えた方が流れがスムーズになるわね」「コレは要らないわ」「ココはイチバン重要なトコロなんだからもっとデータを載せなさい」と,物凄いスピードでインプットを入れてくる.たった一度読んだだけで,どうしてそんなに的確な指摘ができるのですか.


頭の構造が,全く違う.


身勝手でワガママで恐ろしく気分が変わりやすくて高圧的で,普段はできれば顔を見ずに過ごしたいような人だ.けれども,やっぱり,この人の下で働くコトは,プラス以外のナニモノでもナイのだ.


吸収してやる.その見方,その考え方.絶対に盗んでやる.


そんなボスなので,こんなことを言われれば自分が誇らしくも思える.
"At this part, you've pointed out a very good point."
その部分は,自分のデータと過去のデータを比べてみた時にワタクシがいちばん不思議に思い,最も多くの時間をかけて,その矛盾を説明できるモデルを考えた箇所だった.


捨てたモンじゃないネ,ワタクシも.


なんて,少しくらい自惚れたって,イイよネ?