序。
この世界に神秘があるのではない。この世界があることが、神秘なのだ。
多分、日記を始めてから、分子生物学にマトモに触れるよーな記事を書くのは初めてなんじゃないかな。や、それでも今の研究をメインに書こうってワケじゃない。ただ、一冊の書物に衝撃を受けたので、その感覚を忘れないように詳しく書き留めておこうと思ったシダイである。
が、その前に、ワタクシのコレまでのモンダイ意識ってヤツを書いておこう。
進化による生物の環境への適応、とゆーのは軽く聞き流すだけでも「へぇ〜」と思わせるよーなハナシが沢山ある。身近な例として、カルガモの足を挙げてみよう。といっても水かきのハナシではなく、血管のハナシなんだが…。
カルガモは水面の上を泳ぎながら生活しているが、真冬の水温が零度近い時期でもやっぱり水面を泳いでいる。しかしカルガモは、真冬の池の水を冷たいと感じないんであろーか?
それが冷たくないんである。なぜなら、脚の温度も水温並みに下がってるから(爆)。って、しかしモンダイは、どーやってカルガモは脚の温度だけを低く保っているのかってトコロなのだ。実はカルガモの足の付け根の部分を解剖すると、その部分の動脈と静脈、つまり体から脚へ流れ出る血液が流れる血管と、脚から体に戻ってくる血液が流れる血管とが、DNAの二重螺旋のよーに絡まりあっておるのだ。この部分で、体から脚へと出て行く血液(温かい)は、静脈を通って体に戻る血液(冷たい)に熱を渡し、冷たくなってから脚へと流れていく。逆に冷たい脚を流れてきた血液は、動脈から熱を貰って、温かくなってから体に戻る。こうやって熱のロスを最小限に抑えることができるわけ。上手くできてるよねえ、へえ、へえ、へえ。
ちなみに、ワタクシが個人的に「進化ってすげー!」とイチバン思わされたのは、こんな場所に適応しちゃった、ある植物のハナシである。
植物はフツー、根っこから栄養を吸収して、カラダを作る材料にしている。しかし植物がそれらを吸収できるのは、土壌に棲息する微生物が動物や植物の死骸を小さい分子に分解してくれるからである。
ところが土壌の酸性度が強いところでは、微生物の活動が鈍ってしまい、遺骸の分解が起こりにくい。しかもそれが一年中雨の降るような湿地帯だったりしたら、よーやく分解された栄養分もあっという間に流れ去ってしまい、よーするに土壌中に栄養分が全くない環境となってしまう。コンナトコ、植物が生きられるハズがナイ…
んだけど、いるんである。こんな環境に適応しちゃった植物が。何かって?それはね・・・
食虫植物なんですよ。根っこから吸収できないなら、虫を捕まえて溶かして栄養にしちゃえってワケ。げげげ。
とまーこんなカンジなんだがしかし、こんな風に、形態学的、解剖学的な「マクロな視点」からだけ見ていると、生物の進化を「環境への適応」というヒトコトで済ませるコトになってしまう。んじゃー、「ミクロ」はどーなのか。
・・・続く。