序の3

さて、前回は生命体の構造や生化学反応を担っているのはタンパク質で、そのタンパク質は20種類のアミノ酸が直鎖状に繋がってできたもので、さらにそのアミノ酸の並び方が書き込まれている「設計図」が、遺伝子という名のDNA配列だとゆートコロまで書いた。生物の持つDNAには遺伝子という名前の付けられる「意味のある」配列と、あってもなくても困らない「意味のない」配列があることも書いたね。


そしてヒトのDNAは全部で30億文字にもなるとも書いたけれど、このヒトツの生命体が持っているDNAの文字情報丸々1セット分を、ゲノムと呼ぶのですねえ。


さて、30億文字が並んでいるヒトのDNAの約9割が意味のない配列だと言ったけれども、それでも遺伝子の数は約2万5千に上ると言われている。よーするに2万5千の「意味のある単語」が組み合わさって、ヒトの体を作り、生命活動を維持するという「文章」を構成しているわけね。で、ヒトの体は大体100兆個の細胞から出来ているんだけど、この100兆個の細胞が持つDNAの配列も遺伝子(つまり単語)は全て同じ。だけど、この100兆個の細胞全てにおいて、2万5千の遺伝子が働いているわけじゃーない。


遺伝子にはそれがコードしているタンパク質が作られる「ONの状態」と全く機能していない「OFFの状態」とがあるんである。つまり、個々の細胞が持っている単語は同じ、でもそのボキャブラリーを使って構成されている文章が、それぞれ違うんだな(使われている単語が「ONの遺伝子」それ以外は「OFF」)。「目」という器官を構成している細胞は、「目」という文章を作るのに必要な単語を、必要なだけ組み合わせている。余計な単語は使わない。文章の意味が変わってしまうからである。同様に、皮膚の細胞は皮膚の文章を、脳の細胞は脳の文章をってカンジで、それぞれ必要な単語を必要なだけ組み合わせて作っている。因みに、同じ「目」でも「網膜」と「レンズ」ではそれぞれ作っている文章が違うのは、当然である。


では、ナゼ、「目」の細胞では「目」に必要な遺伝子だけがONになって、それ以外の遺伝子はOFFなのだろうか。ナゼ、「筋肉」では「筋肉」に必要な遺伝子だけがONになっているのか?むむむ・・・?


続きは、次回なのである。