モトカノのハナシ。

実は昨年末、電話でモトカノと話す機会があったりした。年末恒例となっている予備校仲間の同窓会で一緒に飲んでいた友人が、そのモトカノに電話をしてワタクシに受話器を回してきたのだ。別れてからメールが何通か来たことはあったが、声を聞くのはもう四年ぶりだったろうか。


特に大したコトは話してない。が、電話の後で届いたメールに、ワタクシは唖然として言葉を失ってしまった。


「またケンと話せて良かった」


相変わらず、何も分かってないな――そう思った。




予備校時代に知り合ってから、モトカノとは気が合った。頻繁に顔を突き合わせてはお互いの心の内を打ち明けあい、相談し合ったものだった。向こうにカレシがいたので、恋愛には発展しなかったが、ワタクシの中には彼女を慕うキモチが、いつしか生まれていた。


大学に入ってからモトカノは東京へ行き、ワタクシは京都でひとりホレタハレタを繰り返していたワケだが、その間もモトカノへの思いは心のドコカで燻り続けていた。


それが、ワタクシが大学院に入ると同時に茨城にある国の研究機関へトバされると、二人の距離が急速に近くなり、結局モトカノが当時付き合っていたカレシから奪うカタチで、付き合うことになった。


予備校で意気投合してから、「なくてはならぬ存在」だと思った。何かある度に電話やメールで彼女と話した。それがどんな内容の話であっても、彼女と話せば「自分は自分である」と感じることができたからだ。そして、話が終わって電話を切る前に、彼女はいつも言った言葉。それが・・・


「ありがとう。ケンと話せて良かった」


その言葉に、ワタクシは、言いようのない満足を覚えたものだった。・・・のだが。


〜続く〜