モトカノのハナシ。その2

しかし付き合い始めて三ヶ月もしないうちに連絡が途絶えがちになり、そしてアッサリと捨てられた。最終告知はメール一本のみという、何とも唖然とするしかない結末だった。


「でも、これまでの大切な友達としてのケンを失いたくないの」


という意味の言葉がそのメールには書かれていたが、それはワタクシの胸に空虚な響きを残すのみであった。


「だったら、とりあえずちゃんとハナシをしないと始まらないんじゃないのか」


という意味のレスをワタクシは送ったワケだが、それっきり向こうからの連絡はストップし、ワタクシから連絡を入れるようなこともしなかった。


それから三ヶ月以上経ってから、モトカノが電話をしてきた。彼女の話す内容は、メールで送ってきた言葉の繰り返しに過ぎなかった。


「ごめんね、忙しくて――」


この女は何を言っているのだろうと思った。彼女はこの三ヶ月、何をしていたのだろうか。医学部の現場研修と医師国家試験の準備とで忙しなかったワケではないのは分かる。だが、ワタクシに電話を入れる時間がゼロだったとは考えられない。だから電話をしてこなかったのは、わずかでも空いた時間をワタクシ以外の事に優先して回していたということになる。それほど優先順位の下の方に回ってしまうワタクシは、彼女にとって大切な存在だといえるのだろうか。


そうでないとすれば、単純に彼女はワタクシという問題から目を逸らし、結果的にワタクシを放置していたことになる。だとすれば尚のこと、ワタクシにとって彼女は信用できない存在であることになってしまう。いざという時に全く頼りにできないことになるからだ。そしてワタクシにとってはこっちの結論の方がショックだった。最初から信用してはいけない人間を、六年間も信じていたことになるからだ。


だが頭でそう考えることは出来ても、当時のワタクシは感情をなだめるコトまでは出来なかった。正直言ってフラれただけでもワタクシはかなり参っていた。彼女と話したいときに話したいことを話せないという事態について、上手く考えることができなかった。要するにまだワタクシは、彼女のことを信じたかったのである。


・・・バカだねえ。


〜続く〜