モトカノのハナシ。その3

それで結局、表面上だけでも何とか友人としての関係を取り繕うようなカタチにして電話を切った。しかし自分は一体、この事態をどう考えればいいのだろうかと、頭を悩ませる日が続いた。彼女の言葉を、「ケンは大切」というその言葉を信じることができればどれほど楽になれただろう。しかし考えれば考えるほど、その可能性は限りなくゼロに近づいていく。


メールで別れの意思を告げてその後音信を絶つというのは、フツーは今後一切の関係を切り捨てる場合に使う手段である。にも関わらず彼女はワタクシにそのような仕打ちを行い、しかし「ケンを失いたくない」と、言ってきた。可能性は二つ。彼女の言葉がウソであるか、仮に本気で言ってるのだとすれば――
彼女は「ケンなら、分かってくれるはず」というとんでもない期待を押し付けていることになる。それはつまり――


「私がアナタに何をしても、アナタは許してくれるはず。だって、私達はお互い本当に大切な存在のはずでしょう?」


という、どうしようもない甘えの構造と一致してしまう。そして彼女自身は、自分ではウソを吐いているツモリがないように思われた。ということは――


彼女は自分の都合次第でワタクシをドン底に突き落としても、分かってもらえると思っている。つまり、いざという時に信用できない。


ワタクシが最も恐れていた結論だった。


〜続く〜