祖母・幸枝.補足

木曜の日記で祖母と祖父の馴れ初めがナゾだと書いたが,その実情はこうらしい.


元々祖父の弟と祖母の縁談があって,ある日祖父が祖母の実家へ弟を連れて行ったところ,祖母はしかし弟ではなく祖父の方に一目で心を奪われたらしい.若き日のジジイはどえらい男前なオトコだったそうな.祖母はそのまま親の反対を押し切って祖父に嫁ぎ,家を勘当された.



他にも色々と壮絶な話がある.


祖父・祖母ともに戦時中は神戸で働いていたのだが,祖父が盲腸を悪化させて腹膜炎を起こし,手術を受けなければならなくなったことがあった.だが手術中にアメリカ軍による空襲が始まり,警報が鳴ると病院関係者は全員が防空壕に避難,祖父の手術は中断された.中断,というのは文字通りの中断で,医者は祖父を,腹が開いたままの状態で放置した.祖父を動かせば死ぬ,爆弾が落ちても死ぬ.そんな絶望的な状況でどうすることもできず,祖母は幼い息子を抱え,手術台の横でただ泣いていたそうだ.


爆撃終了後に手術は再開されたが,これで体力が衰えた祖父は,間もなく結核を患って療養所生活に送られることになる.そして息子もカリエスに罹り・・・病人二人を抱えた祖母の話は,木曜の日記を参照していただきたい.


だが,祖母を襲った悲劇はそれだけじゃなかったようだ.ジジイが同じ療養所に送られていた女性とデキていたらしい.何人も病人を抱えた家を,必死で遣り繰りしてくれているはずの祖母に対してこの仕打ち.ジジイ,ムチャクチャだぞ!


当然祖母は激しく祖父を責めたが,祖父が死んでからはその事を悔いていたそうだ.結局好きだったのか.祖母は祖父の話をするとき,いつもこの言葉を付け加えることを忘れなかったらしい.


「立派な人やった」


・・・あー,胸が痛い.