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さて,皇帝のお墓を出てバスに乗ると,次はお土産です,とガイドが言う.あー,ウワサに聞く例のパターン.お土産やさんとツアー会社が手を結び,ツアー会社は客を店に連れて行く代わりに,売り上げの何%かを受け取るワケだ.


とか思ってるウチにバスが入っていく建物は・・・えっ と思うくらい重厚な建物.門から建物の入り口まで数十メートルある.そんな宮殿みたいな建物の中に,ショーケースに入れられた装飾品がズラリと並んでいる.ひゃー.学生がコンナトコで買い物するなんて,アカラサマにバチガイである.しかし瀋陽翡翠琥珀の産地だとかってハナシでもあるコトだし,とりあえずワタクシは一通り見て回るコトにしたのだが・・・


「お母さんに買って帰ってあげなきゃね」


とオバちゃんに流暢な日本語で話しかけられたのは,琥珀のネックレスを見ていたときであった.


「あははー,そー言われてもこんな高いモンは買われへんわー.ボク学生やもん」
「安くしとくよぉ〜!ホラホラ,こんなのはどう?いいでしょ〜?」
と,ショーケースから出されたネックレス,値段は1500元.って,二万円を軽く超えてんじゃね?
「オバちゃん,全然分かってない.オレ今200元しか持ってへんから」
「大丈夫よぉ!日本円でもカードでも使えるから」
「でもそもそも値段が高すぎるのよ.こんな大きい琥珀は付いてなくていいからさ,もっと小さいのとか,ないの?」
「あるある,いいのがあるのよぉ!」
と,次に出してくれたネックレスは確かに小ぶりの琥珀付き.そして値段は・・・


2300元


「高かなってるやん!!オバちゃん全然意味が分かってない」
「安くしとくよぉ!お兄ちゃん学生でしょ?コレ,日本円ならこれくらいだけど・・・」
と言って電卓を叩くオバちゃん.表示された価格は33000円.
「お兄ちゃんなら特別にこれだけにしといてあげるから」
と言って再び電卓を叩く.数字はそれでも22000円.
「こんな値段じゃハナシにならんわオバちゃん!どんなに高くてもオレが買えるのは五千円まで!」
「そんなんじゃ赤字になっちゃうよ.この鎖なんかお兄ちゃん,プラチナだよぉ!」
「ダレもそんなええもんを五千円で売ってくれとか言うてへんからさ,ってゆーか鎖なんか銀でええねん,ボクは!」
「じゃ一万五千円にしてあげる.他のヒトに言っちゃダメだよ!」
「せやからソレじゃなくていいから,五千円しか出せへん言うてるのに.」
「じゃあこの鎖を銀に換えたげるから,1万円と200元でいいよ」
何か物凄いイキオイで値段が下がり始めた.ワタクシとオバちゃんのやり取りを近くで聞いていた後輩も爆笑している.
「いやいや,五千円.」
「じゃ五千円と200元」
一瞬イエスと言いそうになってしまったが,200元というと約3000円である.八千円はまだ高い.モノがどーとかゆーモンダイではなく,八千円の買い物なんか出来ない.
「んー,あかんなー.うん,ええわオバちゃん.そろそろ他のモンでも見て回るわー」
と言ってその場を立ち去ろうとするや否や,
「五千円でいいよ!鎖もこのままで」
「ええっ,ほんまに!?」
「他のヒトに言っちゃダメだからね」
「ん,ほな貰うわー」


とお金を払い,定価33000円だったハズのネックレスを受け取ると,


「お兄ちゃん,他にも欲しいもの,あるでしょ!?」
「ええっ・・・」

次回,ラウンド2.