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「でも森さん*1にはほんまに感謝やわ」
そうだな.僕も本当にありがたいと思ってるよ.
「俺も職場が大阪やった頃はここから通わんとあかんとこやったで」
僕もアメリカに行くなんて言ってられなかっただろうから.本当に森さん様さまだよな.
「でもさぁ・・・あんま言うたらあかんことやと思うけど,おとんがあの時期に死んだのは俺にとって良かったんちゃうかと思ってんねん」
お前もなのか.僕も,もし親父がもうしばらくでも生きていたら人生どうなってただろうなんて考えると,ぞっとするんだよ.
「うん.おとんが生きとったらバイクなんて絶対許されへんたやろうし,もう今知ってる楽しみの半分も知らんままに生きてしまったんやろなと.何ていうか,おとんを満足させることが最優先課題みたいな.」
全くその通りだと思うよ.確かに親父は抜群に頭も良かったし尊敬してる部分は少なくないけど,やっぱり堅物だったからな.子供のときから病気して,家も金がなくて,家族で助け合って生きてきたっていうバックグラウンドじゃどうしようもないとは思うけど.
「うん.そら凄い人物やったんやなっていうのは分かるねん.けど,あの人は二者択一で人生を生きてこざるを得んかったんちゃうかなって.周一郎*2とか,あいつの親父もメチャクチャ真面目で,P&Gかどっかの重役やってて稼ぎもメッチャ多いのに,でも全然使わんと貯蓄しとってさ,ほんで今はもう引退してまた質素な暮らししてるみたいやねんけど,父親があれやったら息子はそらああなるでーって納得できる感じやねん.」
結局僕らの自由気儘な性格は親父への反動でしかないんじゃないかと,僕は思ってるけどな.
「うん.やっぱ自分て分からんわ」