その79 余裕について4

余裕のない人は,要するに目の前の対処すべき事態(家事や育児,仕事,周囲の人間への思いやり etc)を「重荷」と感じているのである.逆に余裕のある人は,他人への奉仕を喜びと感じる.それは経済的に余裕のある人が,無償の寄付をして満足感を得るのによく似ている.だから経済的な余裕と同様に,精神的な余裕は幸福において重要な要素である.


社会生活を営む上で,常識などの社会的規範は大切なものだ.そしてほとんどあらゆる国や文化において共通している規範は,簡単に言えば「より多くを与え,より少なきを得よ」ということである.余裕がある人間には,この規範は容易に,というよりは自然に出来てしまうものなのだが,しかし「まずこの規範ありき」で行動しようとする人は,容易に余裕を無くしてしまうのである.なぜならば,人が心に余裕を持つためには,まず何よりもGIVE&TAKEのバランスが取れていることが必要だからだ.


昨日引用した夫は,妻との間のGIVEとTAKEのバランスが崩れてしまっている(と感じている)ことが最大の原因だが,多分,理由はそれだけではない.かの夫は,人間関係が妻との間だけで閉じてしまっているのだと思う.


さっき僕はGIVE&TAKEのバランスが重要だと書いたが,そのバランスは別に,夫と妻との間だけで取る必要はないのである.夫は妻へ奉仕した分を,別の人間に別のことで助けてもらえば良いのだ.そういう開いた人間関係は余裕を生み,余裕が更にオープンな人間関係を築く.逆に,閉じた人間関係は余裕を奪い,余裕を奪われた人間は更に閉じてしまう.戦前・戦中の日本,或いは現在の北朝鮮のように・・・


というわけで,かの夫に余裕がないのは,全然,妻のせいではないのである.