針は振れる.

基本的に,思考がマイナスの方向に走った後は,今度は逆に一気にポジティブな方向へ振り戻すものだ.少なくとも,僕は何故かそうなる.


仲間との別れが辛い,というのは確かすぎるくらい確かだ.だが,実は僕が短期間にあちこちを移動しなければならないのは,僕が「研究に全ての情熱を捧げ」ようとしているから,というのとは少し違うことに気付いた.正確には,単純に「僕の力が足りないから」なのだ.
僕はまだ駆け出しに過ぎず,十分な業績がなく,だから安定した地位に就くことができない.逆に言えば,それはつまり「もしも僕が十分な業績を積み重ねて,パーマネントな地位を得ることが出来れば,別れに伴う葛藤に悩まされる心配はなくなる」ということだ.


胸の中に一滴の水がポタリと落ちた感じがした.それは波紋を生じ,全身に広がっていく.


夢,というのは恥ずかしいが,僕にはとりあえず目指すところがある.それはid:KEN_NAITO:20061003の「今いちばん叶えたいこと」に書いた.これが実現した暁には,一度に全ての人間関係から引き剥がされる心配な絶対になくなる.それどころか,毎日が仲間との付き合いになる.無論「チームないとぅ」のメンバーがずっと固定的になるはずはないが,一度に全員が入れ替わることもありえない.


そしてそこに辿り着く最短の道.それが,今回の渡米なのだ.別れは辛い.だが,それは前に進むバネにしてやる.アメリカで研究に持てる能力の全てを注ぐ.そして二年後,三年後には,更に上のポジションへ.そこでまだ「権力」が足りなければ,また全力を尽くすだけだ.


とあるアメリカ映画のワンシーンを思い出す.

バスケ好きの少年が,他の部員に苛められて「バスケなんて辞めてやる」と言ったとき,少年にとって父親代わりの人物は,彼が経営する農場の真ん中で少年に叫ばせる.



「絶対に諦めないぞ!」


字幕ではそうなっていたが,英語の台詞は“They can't make me quit!”となっていた.直訳すると「あいつらには僕を絶対にやめさせることができない」という感じか.感傷的な気分になったり,誰かに邪魔されて足を引っ張られたり,そういうことで気が萎えそうになったとき,「自分以外の何か或いは誰かが,僕に辞めさせようとしている」.そう考えると,気分が変わる.対抗意識が湧いてくる.


そう.何者にも,そして何物にも,僕に前へ進むことを諦めさせることは出来ないのだ.諦めてなんてやらないよ,絶対に.