8月1日 成田3

漸くにしてチェックインを済ませたわけだが,その頃に「行ってらっしゃい」メールが多数入ってくる.そりゃそーだ.皆には12時のフライトだって言ってたんだから.いちいち事情を説明するのが面倒なので,一部の人を除いてこっちも「行ってきます!」メールを返しておいた.

そして出国手続きも終わった頃,突然携帯が鳴った.id:ain_edだった.
「ケンケン?まだいたんだ日本に」
「実はカクカクシカジカでな…ってゆーかホンマやったら間に合ってへんわ,アホ!」
「いやさっすがケンケン,待っててくれたんだね〜」
「まー良かったよ,行く前におめでとうって言ってやることができて.それにしても,3308gとはデカい娘が生まれたもんやのぅ」

ain_edを知ったのは3年前だったか.コミュニケーションについてブログに書いてみたら,いきなり別のブログからリンクを貼られて,それがain_edのブログだったのだ.僕は今まで,僕が考えているようなことを,僕以上に深く考えている人間に出会ったことがなかった.それが,彼のブログを見た瞬間,自分が少し負けてると思ったのだ.同時に,自分の思考のレベルが一つ上がった感じがした.そして次々と頭に浮かんでくることを言葉にして,ブログに上げた.そこへまた,ain_edが反応した.繰り返すほどに,思考が深まる.知的興奮とはこういうことをいうのかと思った.
境遇が似ていた.僕がアメリカに出てきたのと似たような時期に,彼はイタリアへ出て考古学を専攻していた.後から知ったことだが,生家が背負った重い歴史まで似ていた.彼のことが気になって仕方がなくなった僕は,二人共が一時帰国で日本にいる時に会ってみることにした.

「あ,KENさん?東京に来てくれるって話だけど,どっか行きたいとこありますか?」
アキハバラ.とにかくメイド喫茶.」

二人共,普段の言動や立ち居振る舞いはバカだった.


時は流れ,僕は正攻法でアカデミアの道を進んだ.博士を取り,今またアメリカへ行く.研究者として僕が一歩も二歩も進んだ一方で,彼は最高のパートナーを見つけ,あっという間に2児の父親になった.今彼は留学費用を稼ぐために研究からは離れているが,1人の男としての幸福は,随分と先を越されてしまった.


「ケンケン?そのうちオレもケンケンと同じ所に立つから待っててよ」
「オレこそ,絶対お前の誕生日に入籍してやるからな!」


そう,彼はよりによって,僕の誕生日に入籍しやがったのだ.もう一生,3月11日にはain_edのことを思い浮かべずに過ごすことは出来ないだろう.

かつて同じところに立っていた僕らは,一旦正反対の方向へ進んだ.そして,再び同じところへ向かおうとしている.そうなったとき・・・ain_edが1人の考古学者として自立し,僕に息子や娘ができたとき・・・どんな交流ができるだろうか.未来の,大きな楽しみの一つだ.

・・・という日記を,id:ain_ed:20070804への返答としたい.

もちろん,出国前のドタバタはまだ続く.