8月1日 成田6

いよいよ搭乗開始時刻だ.ビジネスだからさっさと乗り込む.席に着くと,添乗員が一つ一つ席を回って自己紹介をし,飲み物はいかがですかと聞いてくる.流石ビジネス.でもブランケットがゲロ臭かったりして.がびーん.
おいデルタ.ちゃんとクリーニングに出してるのかよっ.毛布が入ってたビニール袋は単なる見せ掛けか!?


背もたれに頭をもたせ掛けながら,ふと,もう後戻りはできないな,と思う.
今回は本当に辛い別れが多かった.人との繋がりが大切だと思うようになってから久しい.でも今まで別れがそんなに辛いと感じなかったのは多分,仕事場とプライベートで全く違う人間関係の中で生きてきたからだろう.仕事場の同僚は皆結婚していて,プライベートまで親しく過ごすようなことはなかったし,逆にプライベートな遊び仲間とは会って週に1度程度だ.それが,日本に帰ってからは違った.研究室の同期や後輩達と一緒に実験をし,一緒に飯を食い,一緒に遊んでいた.そこから離れるのが,堪らなく辛かったのだ.
だが別れというのは,置いていかれる者の方が遥かに辛い.僕は何人に寂しい思いをさせただろう.何人泣かせてしまっただろう.それを全て振り切って行ってしまう僕は,本当に間違っていないのだろうか.


その答えは,でも,僕の手の中にある.


決めたのは僕だ.そして帰ってきたときに「僕は間違ってなかった」と,言えるようにするしかないのだ.絶対にそうじゃなきゃいけないわけじゃない.でも,これほどの思いをして日本を出て行った挙句に「やっぱり間違ってた」なんて,絶対に言いたくない.だから,そうならないためには,向こうで全力を尽くすしかないだろう?


村上龍の小説「KYOKO」のラストを思い出す.

何かに向かっているときだけ,未来は,私の手の中にある.


僕の未来はどこにある?
とりあえずは,この飛行機が向かうところだ.