自分の価値観を形成するもの

生まれてから幼児期までは,基本的には何をしても可愛がられる.この時期は,自分の存在を全面的に受け入れてもらえるわけだ.ところがある程度大きくなると,周囲の反応が変化してくる.それまで何をやっても許されたのが,あれをやってはだめだとか,トイレくらいは自分で出来るようになりなさいとか,叱られるようになるわけだ.当然,傷つく.

傷ついた子供はこの状況を打開しようとする.お遣いに行ったり,新聞を取ってきてみたり,がんばって,良い子になって愛されようと思う.逆に言えば,何かしなければ愛されないという誤解を学ぶ時期でもある.とはいえ子供はこうして,「自分なりの愛される秘訣」を手に入れる.

だが,この秘訣は必ずしも役に立つわけではない.お手伝いをいっぱいして誉めてもらおうとした結果,却って「邪魔だからあっちでじっとしてなさい」と言われてしまったり,学校で同級生から「何かっこつけてんだよ」とか言われて傷ついてしまったりするのである.愛される秘訣だけでは足りないことを学んだ子供は,今度は「いかに傷つかないか」を学び始める段階に入る.

今まで何度も失敗して傷ついてきた分,こうすれば失敗しないはずだ,これで上手くいくはずだと期待する.「ほんとに気がきかない奴だな」と言われて傷ついた経験があったとすれば「いつも人に気を使っていれば傷つかないし失敗しないはずだ,認められるはずだ」と思うようになる.こうすれば失敗しないし傷つかないし認められるはずだと考えるようになるわけだ.

こうして,人の価値観は形成されていく.お分かりだと思うが,これはつまりあなたの価値観は,親がどんな価値観を持っていたか,どんな同級生が周囲にいたかという影響をもろに受けることになる.違う親の下に生まれ,違う小学校にでも通っていたら,あなたはおそらく全然違った人物に育っていたであろうことは,想像に難くないはずだ.

・・・つづく