場がなくなる

先日,大学院にいた時の同期がやってたバンドが解散した.2年前に初めてライブを見せてもらって以来,ずーっとサポートしてきたんだけどな.いや,別に彼らは僕のために音楽をやっていたわけじゃないのだから,仕方がないとは思う.でも,だからと言って,寂しくないわけではないのだ.

同期の声と,ちょっと痛めな詩が好きだった.いや,同期はまた別の音楽活動を続けていくのだから,彼女の歌が二度と聞けなくなったというわけではない.バンドのメンバーも,死んだわけじゃないのだからそれぞれに会うことは出来る.だが,それだけでは決定的に足りないものがある.「場」が,ないのだ.

ライブの後,時々打ち上げをやって飲んで喋っていた.今日はどこが良かったとか良くなかったとか.いつの間にかバンドのスタッフ気取りでコメントをしたり,ライブ中の写真を取ったり,最後には持ち前の好奇心と行動力を発揮して,PV製作を駆って出たりした.解散したということは,そういうメンバーたちとの思い出を刻んだ「場」が,消えてしまうということなのだ.「せっかくPV作ってやったのによ〜」という気も,しないわけではない.だがそれより重要なのは,「一生懸命撮ったと思ったら,カメラのスイッチ入ってなかったんだよねー,あの時はほんとガックリだったよ」という話をして笑うことが,二度と出来なくなってしまったということなのだ.

仕方がないとは思う.あの「場」は,僕のためにあったわけではないのだから.でも,だからと言って,寂しくないわけではないのだ.