プレゼンについて

傍目には人前で話すのがチョー得意そうに見えてしまう僕ではあるが,実際にはかなりの上がり症である.発表前には口は渇くし手足は震えるし,たまにうえってなってるし.
でもプレゼンには幾つかのコツがあって,そこさえ抑えてしまえば,どんなに人前に立つのが苦手な僕であっても,アメリカ人でさえ感心させられる程のプレゼンが出来てしまうんである.ので,そのコツってやつを軽く纏めてみる.

初級編

1.イントロが一番大切
学会発表なんかではイントロがスライド1枚で終わってしまう人をよく見掛けるが,それは絶対にやってはいけないことだと思う.論文を一目見れば分かると思うが,本文であるIntroduction, Materials & Methods, Results, Discussionの4つの部分のうち,イントロは大体3分の1を占めている.何故なら,イントロによって自分の研究テーマを文脈の中に位置づけなければ,どんな重大な発見も無意味になってしまうからだ.おまけに,論文ならば専門的な知識を持つ読者が対象だが,学会発表だと聴衆には門外漢が少なくないわけで,プレゼンはそれこそ「教科書に書いてあるような」基本的な事柄から始めるしかない.イントロに全スライドの半分くらい費やしたって構わないくらいだ(ちなみに今回の僕のプレゼンは,タイトルページを除いた27枚のスライドのうち,13枚がイントロ).

発表者がどんな分野に関わっていて,そこにはどんな素晴らしい先行研究があって,でもそれだけじゃまだ捉えきれない問題があって,だからそこを明らかにするor 改善・解決することが目標なんですよ...というのがイントロ.このうち一箇所でも聴衆に理解できないところがあったら,それ以降の発表は全て無意味と化すと言っても過言ではないのである.Nature級の発表でもイントロが下手だと詰まらない話になるし,逆にイントロが良ければ,下っ端ジャーナルにしか載らないようなマニアックな研究でも,マジックのように興味を惹かれてしまうもんだ.


2.スライドはケチらず沢山使う
「大体スライド1枚で1分喋る」って人が言ってるのを耳にするけれど,僕は大体1枚につき2,30秒しか話さないし,だから普通の人の倍以上のスライドを使う.上のイントロと関連するけど,イントロで3項目について2行ずつのテクストを書いただけのスライドを出すような人がいるんだけど,それだったら先行論文から図を引っ張ってくるなりして,大きな図が入ったスライドを3枚作れよ,と思う.自分の結果を見せるときにも,1枚の中に詰め込まずに複数のスライドに分けて,一つ一つの図や表を大きく見せた方が分かりやすいし,話のテンポを保つ上でも役立ってくれる.聴衆は残酷で,ちょっとでも退屈するとスリープモードに入ってしまうってことくらいは,自分が聴衆の立場にいる時に身をもって実証済みでしょ?(笑)

あと「材料および方法」っていうスライドを作らない.というか,一つの実験結果を見せる度に,その結果を受けて次の実験へと繋ぐ「小イントロ」と,次の実験を説明する「小 材料および方法」,そして次の実験結果...という風に見せていく.


3.言葉は図に置き換える
ウィトゲンシュタインじゃないけれど,語ることが出来る事柄は,必ず図によって「示す」ことが出来るもんである.最後の纏めのスライドを除いては,基本的に主語と述語があるような「センテンス」をスライドに書き込むことは厳禁.文章は図に置き換えましょう.テクストはキーワード以外認めない方向で作る.スライドはケチらず,言葉をケチるのが吉.


4.とにかく練習する
練習は大事です.大体10〜20回くらいは通しで練習する.それくらいやっておけば,喩え緊張で頭が真っ白になろうとも,勝手に口や体が動いてくれる.

上級編

5.言葉遣いについて
出来るだけ口語口調で.ニュースキャスターが原稿を読み上げてるみたいな標準語モードで発表する人が多いけど,それだと抑揚が消されてしまって,アピールポイントを強調しようとしてもなかなか上手くいかない.最後にですとますを付けるだけで十分である.
僕は日本語で発表するときは,関西弁のイントネーションを敢えて丸出しにして「じゃあこいつの裏側は一体どないなっとんねん,ということで調べてみることにしました」みたいな感じで話すことにしている.それだけで人に憶えてもらえるし,所詮発表なんて生身の人間によるコミュニケーションなわけで,最後には「個性」が効いてくるのだ.

6.ジョークについて
アメリカ人はよく軽いジョークから自分の発表を始める」ってことを読んだり聞いたりするけども,本来必要のないものです.発表にネタを仕込むのは,普通の発表に自信がついて,余裕が出来てからにすること.どんなにネタが面白くても,肝心の中身がスカスカだと却って軽蔑を買うだけだったりするし.ただ学会内で「アイツの話は面白い」という評判が立ってくると,それだけ聴衆が集まってくるし,自分も発表自体を(プレゼン作りも)楽しめるので,並みのプレゼンでは飽き足らなくなってきたら挑戦してみましょう.