読破

カラマーゾフの兄弟3 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟3 (光文社古典新訳文庫)

第3部読了.後半は長男ドミートリイの独壇場.第2部のような思想対決のような話とは打って変わって,愛憎ドラマと殺人事件が絡んだスリルとスピード感に満ちたミステリー的展開となる.第4部の裁判がこれまた傑作なんだよなー.早く続き読みたい.
しかし旧訳を読んだときにはあまり好きになれなかったドミートリイだけど,いやいや,あまりにも魅力的な人物じゃないか.誇り高く情熱的で,純粋で傷つきやすい.世間とか常識とかいうものを分かっていながら,しかし一旦感情に突き動かされたが最後,そのまま有無を言わさず突っ走る.お金が入れば見ず知らずの人間にまで大盤振る舞いし,翌日にはすっからかん.社会の良識派からは嘲笑されたり軽蔑されたりする一方で,多くの民衆から慕われ,愛されている.
ドストエフスキーは見事なまでに登場する人物の性格を描き分ける.しかしこれほど性格の異なる3兄弟(4兄弟?)といえども,全員が著者自身の一面をそれぞれに切り取って拡大したものなのだ.登場人物の一人ひとりに反映されている,著者の人間洞察は本当に素晴らしい.そりゃ人生変わるほどの衝撃だって受けるよ.うん.