読破

ジュンイチから借りて一日で読み切る.
言わずと知れたSF小説の金字塔.ウィルスミスの映画「I, Robot」の原作ね(ストーリーは全然違うけど).

1.ロボットは人間に危害を加えてはならない.また人間に危害が及ぶことを看過してもいけない
2.ロボットは第一条件に反さない限り,人間の命令に従わなければならない
3.上記の条件に反しない限り,自己を防衛しなくてはならない

という「ロボット工学の三原則」は超有名だけど,この三原則のせいでロボット達は様々なジレンマに陥る.そういう短編小説集だ.
例えば,人の心を読む事のできるロボットがいる.このロボットは,密かにあなたが思いを寄せている相手が,あなたのことをどう思っているかも知ることが出来る.あなたはロボットに尋ねる.
「彼は私のことをどう思っているのかしら?」
ロボットは,その彼が他の女性を愛していることを知っている.だがロボットはその事実をあなたに教えることは出来ない.なぜならその事実はあなたのことを傷つけ,それは上記の第一条件に反することになるからだ.
だからロボットはウソを吐き,あなた自身が望んでいる回答をあなたに与える.「彼はあなたのことを愛していますよ」と.
だがそれがウソであると分かったとき,あなたはより深く傷つく.つまり,ロボットは結果的に第一条件に反してしまったことになる.真実を言っても傷つけ,言わなくても傷つけてしまう…そしてロボットはショートする.

作品の中でロボットたちが抱えさせられる葛藤は,秩序立てられてる筈の論理的思考というものが,必ずジレンマと葛藤を生み出してしまうという真理を象徴しているように思う.確かにロボットたちが抱える葛藤は人間のそれとよく似ている.それは道徳的と,エゴとの対立だ.だが,論理的思考しか出来ないロボットは壊れてしまうのに対して,人間はジレンマや葛藤を抱えつつも,ほとんどの場合はそれを吸収して何とかやっていくことが出来る.

そう考えてみると「論理的思考」というものが,人間らしさを表しているものでは全然ないということになるのだろうか.これは面白い問題だな.