依存と自立.

人間関係を見る上では,自立か,依存か,という切り口がある.どちらも必要な要素なのだが,親と幼子の関係でもない限り,自立か依存のどちらか一方で固定してしまうと問題が起こりやすくなる.

依存の位置で固定してしまった場合には,相手に対して「嫌われたらどうしよう」「見捨てられたらどうしよう」などの恐れがあるため,相手の顔色を伺うような態度になって,我慢や犠牲的行為をしてしまう.結果,自分の欲求が満たされず,相手に不満を持つようになる.
しかし自分のために相手に何かして欲しいと思っても,恐れのために求めることも出来ない.結局自分の欲求が満たされるが否かは相手次第で,相手に振り回されるハメに陥る. そして「この嫌な気分は,あなたのせい!」と思い,しかし自分ではそれをどうすることも出来ない,

そして相手に依存したせいで傷ついた結果,「もう誰にも頼らずに1人で生きていくんだ」となったのが自立の状態である.だから他人に依存することを嫌ったり禁止したりする. しかし対人関係の中で自立の位置にいると,依存の位置にいる人が集まってきたりするのだが,自分自身が依存を拒絶しているため,その依存的な相手に対しても同じように感じたりする.彼らに足を引っ張られているよううな感じを抱いてしまうわけだ.
また他人に頼ったり甘えたりすることが出来ないため,辛いことや苦しいことがあってもそれを1人で何とかしようと抱え込んでしまう.しかしこれは自分が辛くなるだけではなく,周囲の人間に「助けさせない」ことで,彼らにも罪悪感や無力感を感じさせてしまい,他人との関係まで悪化させてしまうこともある.
さらには,自立の位置にいる人は「自分のやり方」というのを大事にする(他人に頼らない=他人のやり方にも頼りたくない)ため,他の人とぶつかることが多くなってしまう...

で,人間関係の最終段階は「相互依存」という.お互いがそれぞれに自立してて,その上でお互いに依存も出来るという関係である.相互依存は対等な関係で,依存の位置にも自立の位置にも自由に行き来ができるという,フレキシブルで楽な関係だ.目指すならやはりここだろう.

依存の位置にいる人は,相手に何か「こうして欲しい」と思ったなら,敢えてまずそれを「与える」ということが第一歩だ.もし「自分には与えられるものなんてない」と思い込んでしまっているなら,何故「できない」と思ってしまうのか,と自らに問うてみることだ.

自立の位置にいる人は,当然「頼む」「当てにする」というところから始める必要がある.そこに大きな抵抗を感じるとしたら,過去の傷ついた記憶を洗い直してみるしかない.だが,過去の出来事に,これからの人生のすべての時間を縛られることほど,不合理なことはないのだ.