僕の実家の庭には松の木が生えている.大きくて立派で,屋根より高くて,子供のころは毎日のように見上げてた.
それが枯れてしまったらしい.雷が落ちたんだそうだ.
母曰く,もはや切らざるを得ないと.
その松の木は,曾々爺さんが移ってきてから,曾祖父母の人生も,祖父母の人生も,僕の親父の人生も,変わらず見送ってきた.当然僕の人生が終わっても,それは変わらず在り続けるんだろうと思っていた.
それが,こんなにも呆気なく終わってしまうとは.七月に帰ったときは,いつもどおり僕を迎えてくれたのに.
またひとつ,僕の原風景が失われる.