読破

日本にいる間に新たに9冊の書物を購入.うち3冊を日本にいる間+飛行機の上で読みきってしまった.

[新訳]韓非子

[新訳]韓非子

本当は原文と訳文だけの本が欲しかったのだけど,それだと全4巻で持ち帰れないし,妥協してこんなのを買ってみたわけなんだが,やっぱり余計な解説のせいで重みが随分と消えてしまっていてフラストレーションが溜まってしまった.それでも韓非ならではの「身も蓋もなさ」は健在で,やっぱり痛快.現実的過ぎて人間味がないと言えばそれまでなんだが,逆に人間の本質をズバリと言い当て,更にそれを逆手にとって,人を操る術策にまで発展させてしまう人物が2400年前に存在していたというのが凄いね.


哲学的な何か、あと科学とか

哲学的な何か、あと科学とか

脱帽.哲学的・科学的な話がこんなにも取っ掛かりやすい形で書かれていた本は見たことないわ.過去に読んだ科学哲学や論理哲学のおさらいにもなったし,クオリア論なんかはそれが哲学的に意味するところを初めて理解させてもらえた.ルパンのマモーみたいにクローンを作り続けて不老不死を手に入れたキャラがよく漫画やアニメには出てくるけれど,自我や心の問題は決してクローンなんかで解決出来るものではなかったのだね.仮に今の僕と同じ形をしたクローンを作って,僕の人生の約31年分の記憶を入力することが出来たとしても,「この僕」が見たり聞いたり感じたりしていることを,クローンは知ることが出来ない.無論その逆も然り.だから僕とクローンは例え完全なコピーであったとしても,全くの別人だというわけ.

余談だけど,温泉宿で伊勢海老の炭焼きが出てきたのだけど,この伊勢海老が縦に真っ二つに切られていたのね.人間なら即死だろーけど,さすが伊勢海老,それでもまだ生きていた.んで,七輪の上に伊勢海老くんの右半身を乗せると,しばらく足を動かしてもがくのね.当たり前だけどまだ焼かれていない左半身はもがいたりしない.この瞬間,右半身は激しく熱さを感じていたわけだけど,左半身は熱くない.右半身を有難く食べ終わってから左半身を網に乗せたときに,初めて左半身は熱さを感じて足をバタバタさせる.これってつまり,切断前は伊勢海老君は一つの自我を持っていたはずだけど,切断後は二つの連絡不可能な自我に分かれてしまったってことだよな?つまり,右半身にとって左半身は他人だし,左半身にとっても,自我は左半身だけで,右半身はやっぱり他人なのだ.例え切断前は一つの体と自我を共有していたのだとしても.・・・伊勢海老を焼きながらそんなことを考えていたわけだが,まさにその問題が本書にも書かれていて,スッキリした.


生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

分子生物学者にとっては古典とも言うべき書物だね.物理化学の視点で生物を見るとこういう風に見えるのか!という目からウロコな言葉が満載.教科書で学んだ「基礎事実」の,更に裏の裏まで見せてもらった気分.清水博の「生命を捉えなおす」と併せて読むことをヲススメしたい.その次はオートポイエーシスだな.僕は真逆の順番で読んでしまったわけだけど.