学術的背景2

昨日の続き.

一方,近年では生物の進化においてはタンパク質をコードしている遺伝子そのものが変化することよりも,いつどこでどの遺伝子が発現するか,つまり遺伝子がON/OFFになるタイミングが変化していくことの方がより重要な役割を演じてきたとする考え方が主流になりつつある (Gregory A. Wray et al. 2003, Sean B. Caroll 2005, 2008).この遺伝子のON/OFFを決定する主な役割を担っているのは,遺伝子をコードしている配列の上流側に隣接している「プロモーター」と呼ばれる配列であるが,このプロモーターにはスイッチの働きをする文字配列が多数存在し,このスイッチ配列の組み合わせによって,遺伝子がONになる場所・時間および発現強度が決定されている.つまり,このプロモーター領域の配列が書き換われば,当然遺伝子の発現パターンも変化することになるわけだが,2000年以降の幾つもの大規模な研究により,このスイッチ配列には,やはり転移因子によってもたらされたものが多数存在することが明らかになってきた(Cedric Feschotte 2008).このような事実から,分子進化学および分子遺伝学の分野において,転移因子は再び注目を集める存在となっている.


明日から具体的に僕の研究成果.Natureに載ったやつね.