最近読んだ本

種の起原〈上〉 (岩波文庫)

種の起原〈上〉 (岩波文庫)

種の起原〈下〉 (岩波文庫)

種の起原〈下〉 (岩波文庫)

進化論の原点.にもかかわらず,今の今まで読まずにいたのはどういうわけなんだか.生物の形態や行動様式が,それぞれの生活環境に見事に適応していることに瞠目したダーウィン科学史・生物学史的には「生物は進化している」という彼の結論こそが重要な位置を占めるのだけど,ダーウィン自身にとっては,どのようにしてその生物が今の姿になったのかってことの方が重要な問いだったんじゃなかろうか.今僕が扱っている植物を見たら,彼は何と言っただろうか.ちなみに,この書物を読んだ直後に僕はそれらの植物を見て,「ダーウィンの気持ちが分かるわー」と思った次第.


ローマ亡き後の地中海世界(上)

ローマ亡き後の地中海世界(上)

ローマ亡き後の地中海世界 下

ローマ亡き後の地中海世界 下

ローマ人の物語全15巻を読み通した僕としては,これは読まねばならぬと思った次第.しかし著者の以前の著作で扱われた部分が内容の大半を占めていたため,読んでて興奮させられることはあまりなかったかも.それにしても,相変わらず文体がお洒落過ぎて困るぜ.

遊びと人間 (講談社学術文庫)

遊びと人間 (講談社学術文庫)

松岡正剛がカイヨワのことを絶賛していたのがずーっと印象に残ってて,いつかどこかで見つけたら絶対買って読んでやろうと心に決めていた本.案の定,松丸本舗にて発見.一般には労働が善,遊びはよろしくないものと捉えられてるけれども,いやいや,遊びこそが文化や創造性を生み出す原動力であり,人間性そのものなのだと言ってます.そう,研究も遊び心を忘れたら絶対新しい理論や仮説は閃かない.科学とは先行研究を追従することではなく,むしろ先行研究への反抗なのだから.

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

これは名著だと思った.功利主義自由主義では掬い切れない倫理問題について,著者は第三の道徳哲学(気になった人は本書を読んでね)を提示する.かなり納得のいく論理だったし,僕自身考えを改めなければならないと思わされた部分がかなりあった.がしかし,残念ながら彼の考え方が世の主流となることはないと思った.理由は,功利主義自由主義は人間の直観にマッチしているのに対して,彼の哲学はそれこそ論理的に深く考える必要があるからだ.16世紀までヒトが地球は平らだと信じていたのは,それが直観にマッチするからだ.もちろん,科学によって疑いようのない客観的証拠が提示されて,人は地球が丸いと信じるようになったわけだが,悲しいかな,倫理問題には提示するべき客観的証拠が存在しないのだ.

ホワイトヘッドの哲学 (講談社選書メチエ)

ホワイトヘッドの哲学 (講談社選書メチエ)

ホワイトヘッドってこういうことを考えてたんだ,ってことが随分平易に解説されている.著者はホワイトヘッドが如何にユニークな哲学者であるかってことを力説してるんだけど,僕の中ではドゥルーズ的なポストモダンや仏教とよく似た哲学だなーという程度に留まってしまったかも.にしても,僚友だったはずのラッセルとは全然違うなー.経験主義の盛んなイギリスにこんなこと考える哲学者がいたとはねぇ...