食糧問題はもはやサイエンティストの仕事ではないのかも知れない

先日紹介したNATURE誌や日経BPの記事なんだが,どちらの記事にMonsantoやDupontやPioneer Hi-Bredといった,いわゆる種子メジャーに関する特集がまず最初に載っていた.で,これらの企業は広大な隔離温室を使って,遺伝子組み換えによって作られた乾燥に強いトウモロコシなんかのテストを行っている,と.んで何より唖然とさせられるのが,種子メジャーで投入されている研究開発費.$2.6million/dayって毎日26億円も使ってんのかよ.ひょえー

ということで,僕らは本当に時代の大きな転換点に立たされているのだなという事実を改めて認識.アフリカの半乾燥地帯でも栽培できるような作物の研究開発って,利益の追求とは関係のない,大学や国際的な研究機関がやるべきことなのかなと思ってたけど,企業がこんだけの資金を投入してるってことは,もうそれは完全にビジネスとして成立する分野なのだなと.Natureや日経BPの記事を読んで「これから日本はどうやって対抗していったらいいのか」ってことを考えてしまう人は多いと思うのだけど,仮に日本の政府が種子メジャーに対抗して重点的に予算を配分したとして,5年で2億円のプロジェクトが始まるとかそんなもんにしかならないんじゃないかな.がんばってその10倍出したとしても20億.種子メジャー1日分にもならん.まるで物量作戦で攻めてきたアメリカに対して,わずかばかりの援軍を送って「あとは精神論で何とかすれ」とか言ってた大日本帝国大本営みたいだけど,まあ日本人はそういう絶望的な戦いをするのが大好きだから仕方ないのかしら.「はやぶさ」には僕も感動したけど,あんなミラクルは狙って起こせるもんじゃないわけで.

…っと,話が逸れた.要するに,今や乾燥とかのストレス耐性に関する研究がビジネスとして成立する時代になり,私企業が巨万の富を投じてやってくれることになったわけです.ということは,そういう研究開発をしたい人間は,MonsantoやDupontの研究者として働けばいいわけだ.つまり,食糧問題はもはやテクノロジーの問題であって,サイエンスの問題ではないということでもある.

では,サイエンスとは何か?それは飽くまでも,知的な探求である.ただし特定のルールに則っている必要はあるが.