嫁、渡米

多くの人にはビックリというか衝撃かも知れないんだけど。
嫁は昨年度から看護学科の教員をやりつつ、空いた時間に研究をするという2足の草鞋生活をしていたわけですが、やっぱり研究に専念したいということで、研究職のポストを探していたわけです。でも、日本で医学系の研究職って、やっぱり国家医師免許を持ってる人が幅を利かせていて、看護師出身の嫁は軽く見られてしまうみたいで、僕のいる関東周辺どころか日本中探してもポストなんか見つからない。国際学会でも賞を貰って、顔も名前も売れてるくらい業績挙げてるのにねえ。。。
で、その国際学会で、シアトルにあるUniversity of Washingtonのプロフェッサーから「もし君が奨学金かFundを自分で取ることが出来たら、ウチに来てもいいよ」と言われたらしい。その話を聞いて、僕は彼女に訊きました。

「で、行くの?」
「いやー、けんくんがアメリカにいるときやったら行っても良かったと思うけど。」
「あ、そう?まあ僕としても、出来れば早く一緒に住みたいしなあ。」

とか話していたのも束の間、とある学会だか財団だかが若手の研究者の留学資金を給付するという奨学金の募集があって、出してみたら通りましたと。しかも看護師出身でその奨学金に採択されるのは異例中の異例、財団史上初めてのケースですよと。

「で、行くの?」
「・・・。」
「行きたいの?」
「…うん。行ってもええやろか?」
「えー(笑)、てゆーかまーそりゃ、やっぱり行った方がええに決まってるわな、経験的にも、キャリア的にも。行きたいんやったら行ってきよし。」
「ごめんやで」
「いやいや、僕だって4年前に『2年で帰ってくるから、待ってて!』とか言ってアメリカ行って、結局3年おったけど、アンタ待っててくれたやん。それに、結婚したからって、やりたいことを犠牲にしてまで一緒に暮らす必要はないやろ。一緒に暮らすのは後でも出来るけど、アメリカは多分今逃したらもうチャンスはないやろし。まあ確かに子供が出来んくなってまうリスクは上がるかもやけど、出来んかったら出来んかったでしゃーないわ(笑)。喩え子供が出来なくても、幸せな人生を送る方法くらいはあるって」
「ありがとう、けんくん」
「しかしまあ何というか、まさかの入れ違いやなー。日本に帰って結婚して一緒に暮らすぞーって言ってたのに、僕ら(笑)。毎度毎度、来年のことを言っては鬼に笑われる夫婦やね。今回も爆笑されてるで。」

というわけで、9月から嫁はアメリカに行くことになりました。
しかし嫁の渡米を聞いた僕のお袋は絶句。嫁のおかんは激怒。まあ、そーなるよね、フツー。でもだからこそ、僕だけは全面的に嫁の味方でありたいと思うわけです。

そんな僕の態度が、嫁の友人や同僚に「何て理解のある旦那さんなの!?」と大評判らしく、嫁はそれがまた大変気分が良いらしい。

あ、今思ったんだけど、ラブストーリーだとよく男が女に「行くな。オレの側にいろ」って言うラストシーンがあったりするけど、僕は思います。
そんなの愛じゃねえ。