オン マイトレイヤ ソワカ!!

昨日のことなんだが、幼馴染が日記で「生きてて良かった」と書いているのを見て、ホッとしたのである。

もう5年前の年始のことだっけ。幼馴染と八坂神社に初詣に行って、そのときに彼女が言ったのだった。学生時代からずっと付き合っていたカレシと、いよいよ結婚することになりそうだと。

今まで何度も幼馴染からカレシの愚痴を聞かされていた僕は、その結婚話に一抹の不安を感じずにはいられなかったんだけど、結末は僕の予想の斜め上をいっていた。破談になったのだ。それも、他の女に乗り換えやがったという・・・。

その結果、彼女は病院で鬱と診断されることになってしまった。

彼女の落込み方は思っていた以上に深刻だった。あまりのやつれようにゾッとした。あんにゃろう、僕にとってたった一人しかいない幼馴染に何てマネをしてくれるんだ、とは思ったけど、それどころじゃなかった。何とか彼女をこっちの世界に引き留めておくのが先決だ。

そして思ったのである。絶対に見放すまい、と。

心の傷に特効薬なんかない。必要なのは、時間だ。今どんなに辛い状態にあっても、何年かが過ぎれば、絶対に心は楽になる。「そんなこともあったよなあ・・・」と振り返ることが出来るようになる。ならば、少しでも時間が早く過ぎるようにすればいい。一人だと一日でさえ永遠の長さに思えてしまうが、誰かと一緒なら、少なくともその一日は乗り切ってくれる。そういう時間を、少しでも多く、作っていくしかない。

接し方も、腫れものに触れるようなやり方には絶対にならないように気を付けた。といって同情するのでもなく、物言いもストレートな言い方を選ぶようにして、時には敢えて結婚破棄されたことをネタにすることまでした。所詮、3年後には笑って話せる問題なんだから、と。

それから1年くらいの間に、色んなことがあったなあ。

幼馴染と、もう一人の女の子と一緒にドライブに出かけたときのこと。(この女の子も、同じ頃に、結婚式を挙げてから、一方的に婚約を破棄されるという酷い体験をしていたんだよなぁ…というか、この時期の僕の周囲には、将来を約束した相手から捨てられて、今人生でいちばん不幸な時期を過ごしてますって人間が4人もいたのはどういうわけだ…約束くらいきちんと守れ、というより、出来ない約束なんかするんじゃねえ!)

幼馴染曰く、この前とある占い師のオバチャンから幸せを呼ぶ呪文を教えて貰った、「オン マイトレイヤ ソワカ」というらしい、と。

お前占いなんか行ってんのか、とか、「オンマイトレイヤソワカ」って、確か密教で「弥勒菩薩」を意味する真言のはずだけど、そのオバチャンは大丈夫なのか、とか気になることはあったけど、大事なのはそこじゃない。信じる者は救われる、ってわけでもないけど、ここは一丁・・・

僕は「じゃあその幸せの呪文を唱えまくってみんなで幸せになろうぜ!」と言って、車の窓を全開にして、腕を突き出しなら叫んだ。オン マイトレイヤ ソワカ

続いて二人も叫ぶ。オン マイトレイヤ ソワカ

どうせ滋賀県の田舎道。両脇は田圃で、誰も見てないし聞いてもいない。

もっと叫べ! オン マイトレイヤ ソワカ! オンマイトレイヤソワカ!!

5,6回繰り返すと、3人とも相当にテンションがハイになって、自然と笑ってた。少なくとも、今この瞬間は、笑える。僕は運転しながらウルフルズの「ええねん」が入ったCDをセットして、思ったもんだ。この笑いで、多分、二人とも、今日一日を生きるだけの力は湧いてくるだろう、とかね。


極めつけは、夜の琵琶湖に向かって叫んだこと、だよな、やっぱり。
幼馴染と、上記の女の子と3人で浜大津港の桟橋まで行って、お前らのしょーもない男どもを罵り倒したれと。

最初は○○のアホーッ とか ボケーッ って言ってたのが、
「チンコ小さいんじゃー!」とか
「フィニッシュ早すぎー!」とか
「お前のセックスでイッたことないわー!!」とか
「ワンパターンも大概にしろー!!!」とか
僕はもう笑いが止まらなかったなー。周りに人がいるのも気にせず、よくあれだけ喚き散らせたもんだわ。


そうそう、誕生会もやりました。http://d.hatena.ne.jp/KEN_NAITO/20061218


そうこうしているうちに、二人とも新しい男ができて、時は流れて。

そして5年が経ち、幼馴染は、今、めっちゃ元気で、大きな仕事を成し遂げて、食い物がうまくて、お通じもいいらしい。

心の底から、安堵している。

ちなみに

当時僕の周囲に4人いた不幸な人の残り二人についてだけど、一人は今年双子の父になり、もう一人は、僕の嫁になっている。