オススメの1冊、否、2冊
- 作者: 小野功生
- 出版社/メーカー: ナツメ社
- 発売日: 2004/09
- メディア: 単行本
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構造主義以前の哲学といえば、サルトルの実存主義。人間とは、自らの自由と責任において主体的に行動し、歴史に参画し、文明を進歩せしめるものである!というような、そんな感じの哲学。極論すれば、主体性を欠いた人間など、もはや人間ではない!とでも言ってしまわんばかりの勢いである。
で、そんな考え方に思いっきり反対したのが、一昨年死んじゃったレヴィ=ストロースである。彼曰く、我々が自由とか主体性とか進歩とか、そういうのが当たり前だと思ってるのは、我々が現代のヨーロッパという、変化の激しい社会に生まれ育ったからに過ぎないんじゃねーの、と。アマゾンの奥地には何千年も前からずっと変わらない生活をしてる民族や集落がいっぱいあって、そこの住民たちはみな文明も進歩も拒否している。しかし、だからと言って、彼らが人間じゃないなんてわけ、ないよね?
つまり、結局、ヨーロッパ人はヨーロッパ社会という構造によって思考・行動パターンが決定されていて、アマゾンの原住民たちも同様に、原始社会という構造に支配されている。ヨーロッパ人がいくら自由とか叫んだって、所詮はヨーロッパ社会の構造の中で騒いでいるに過ぎないのだよ。そう、要するに我々は、井の中の蛙に過ぎなかったのだ!というのが構造主義の基本概念である。
- 作者: 大城信哉,小野功生
- 出版社/メーカー: ナツメ社
- 発売日: 2005/12
- メディア: 単行本
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例えば男尊女卑の構造からの脱却を図ったのがフェミニズム、という具合。でも当然、一旦フェミニズムというものが成立した途端に、それは新たな構造として人間の思考と行動を支配し始めるわけで、だからポスト構造主義の立場を貫こうとするならば、フェミニズムにさえ捉われてはいけないわけ。
面倒くさいね。でも自由と主体性って、そういうことだから。
こうしてヨーロッパの哲学は、どんどん仏教と変わらなくなっております。(笑)