実は,今日は…

友人の命日である.彼とは浪人時代に予備高で知り合った.三浪生だった.彼を中心に十数名の仲良しグループができた.
男女ほぼ同数のグループだったせいか,内部では常にホレたハレたの話題にコト欠くコトはなかった.それこそ二人で一人を取り合って見たり,フラれて予備校に来なくなってしまったヤツが居たり.かくいうワタクシも,当時好きだった女性を,結局彼にモッテいかれた.いやー,青春,青春.それはさておき…
その年の受験で,彼もようやく目指していた医学部に合格することが出来た.そして夏休みの度に,世界のどこかへ彼女と旅に出かけていた.
そしてある夏の日,旅行先のオーストラリアで,運転していたレンタカーが砂利で滑って横転し,頸を折った.即死だった.助手席に乗っていた彼女は,無傷だった.1999年8月24日.彼は24歳の誕生日に,24年の短い人生を終えた.
この時ほど死というものを身近に感じたことはなかった.15の時に親父を亡くしていたとはいえ,それでも父は当時48歳.友人の死は,自分にもいつ死というものが降りかかってきても全くおかしくはないのだということを,強烈に感じさせた.そしてワタクシに,次の問いを自問させずにおかなかった.「仮に今自分が避けられない死に直面したとして,自分は(これから遣りたいコトはあったにしても)少なくとも現時点まで満足のいく人生を歩んできたと思って死ねるか?」と.答えは,「否」だった.
そしてもう一つ.友人を亡くしたことによる喪失感が,ワタクシに「人生は,所詮他人との関わりによるところが大部分を占めている」ことを初めて自覚させた.
これら二つのことが,それまで基本的に人間嫌いで厭世的だったワタクシの人生観を決定的に変えた.ヒトに対する興味が生まれ,会話の楽しさを知った.コミュニケーションに必要な話術は,弟くんから徹底的に盗んだ.面倒くさがりで一人で時間を過ごすのを好んでいたのが,今では旅に出て,景観や食はモチロン,旅先での一期一会が最大の楽しみとなった.…
あれから,ちょうど5年である.24のまま永遠に止まってしまった彼の時を,いつのまにか追い越してしまった.今日も自分に問いかけてみる.あの時と同じ問いを.