vol.1

浪人時代,男女混合十数名の仲良しグループができた.彼らのオカゲで,浪人した一年間は本当に楽しい,思い出深いものとなった.
しかしめでたく大学に合格してから二年半が過ぎようとしていた頃…そう,忘れもしない1999年8月24日.そのグループの中心にいた友人が,彼女とオーストラリアを旅行しているときににレンタカーで交通事故を起こし,この世を去った.彼女は,無傷だった.その彼女も,グループの仲間だった.
事故から一週間ほどして,遺体がオーストラリアから届けられ,実家で葬式が行われた.浪人時代のグループが全員集合した.もちろん,彼女も.
でも,ワタクシには分からなかった.イチバン大切な人を目の前で失った人間に,友達としてどう接していいのか,どう声を掛けていいのか,全く分からなかったのだ.彼女の気持ちを想像すればするほど,胸が痛んだ.何か言わなければと思った.だがそう思えば思うほど,益々どうしていいのか分からなくなった.結局葬式の間中,ワタクシは彼女の方を見るばかりで,声を掛けることができなかった.彼女の方からワレワレのグループに近づいてくるコトもなかった.
葬式の後,ワレワレは全員ヒトツの民宿に泊まり,予備校時代の写真などを見ながら,あの時,アイツが…,お前アイツに…等々思い出話に花を咲かせていた.彼女は死んだ友人の実家に世話になっていたが,やはり彼女もこの場にいた方がいいだろうということになり,誰かが迎えに行った.
しかし彼女がその場に現れた瞬間,空気が変わった.誰も死んだ友人の話をしなくなってしまった.一部の人間は彼女に背を向けて自分たちで勝手にハナシをしだす始末.ワタクシもワタクシで,葬式の時と相変わらずでだった.
…いや,言うべきコトはあった.ワタクシのアタマの中には,既にコトバが浮かんでいた.だがそれを口に出す勇気が持てず,結局飲み込んでしまった.
彼女は少し俯いて黙ったまま,一時間もしないうちにその場を去っていった.
翌日の帰り道,ワタクシのアタマの中には同じ問いが繰り返し,何度も何度も流れていた.
「友達とは何なのだろう…?」
自分の,無力を,呪っていた.

…続く