vol.2

死んだ友人の葬式から一ヶ月か,二ヶ月くらい過ぎた頃だろうか.ある秋の夜のことだった.ワタクシの下宿の電話が鳴った.出ると,彼女だった.
「京都に帰ってんねんけど…」
彼女が通う大学は,青森県弘前で,しかもそのときは休みでも何でもない時期である.大学の授業は…?と言いかけてスグ飲み込む.そんなものをやってられなくなったから,放り出して実家に帰って来たのだ.やはり精神的な打撃は相当なものだったのだろう.
今度こそ彼女に会ってハナシをしなければ,と思った.しかしワタクシは,迷った.彼女に会ったところで,彼女の傷にどう向かい合っていいのか,未だに分からない.だが葬式のときに,結局彼女に対して何もしなかった自分が浮かんだ.もし,今また彼女に背を向ければ,待っているのはあの時と同じ後悔だけだ.だったら…
「明日会えるか?」

電話を切って,考える.さあ,どうするんだオレは?一晩中考え続けて,結論は一つ.できるだけ話させよう,ということだ.自分のコトは向こうが聞いてきたら答える.自分も15の時に父を亡くしたが,その経験が彼女の参考になるとは思えなかったのだ.
でも,一つだけ,聞いておきたかった.
「なんでオレに電話してきたん?」
そう,どうしてワタクシなのか.葬式の時,ワタクシも他の予備校仲間も,彼女にヒトコトも掛けられなかったコトに変わりはない.ワタクシはもう,彼女がワタクシも含めてワレワレに何かを期待するようなコトはないだろう,と思っていたのだ.
「でも,けんくんが私の方ずっと見ててくれたんは気付いてたから…」
少し,嬉しかった.気持ちは目を通じて,僅かにしろ通じていたのだ.だが,ということは…
他の連中は,彼女の視線すら避けていたのだろうか…?

…続く