vol.4

そうこうしているうちに一年が過ぎた.彼女に昔のような明るさが戻ってきたわけではなかったが,それでも時々笑うようにはなった.ある夏の日,一緒にリュック=ベッソンの「ジャンヌ=ダルク」を観に行った.この映画の最後で主人公は火炙りの刑に処されるのだが,観終わった後に彼女がそのシーンについてこう言ったのは印象に残った.
「やっぱり死ぬのは怖いなぁ…」
そろそろ,大丈夫かも知れない.大丈夫,というのは再び彼女が予備校時代の仲間の中に戻って来れるかも知れない,という意味である.そこでワタクシは一つの計画を立てた.
彼女は当時バイクに乗っていて,夏休みに青森から京都までバイクで戻っていた.ワタクシは夏休み明けに青森で開催される学会に行くことになっていて,学会に向かう途中,新潟にいる予備校仲間のウチへ寄って行くコトにしていた.そこで彼女に勧めてみたのだ.彼女も青森に帰る途中,その新潟の友人宅に泊まってはどうか,と.そいつの家で,三人で落ち合おうよ,と.
「そうしよっか」
ソレまで予備校時代の連中にはあまり会いたがらなかった彼女が,案外簡単に彼女は承諾した.しかし,これは上手くいくんじゃないだろうかというワタクシの期待は,完全に裏切れらることになるのだった.
…続く