vol.5

そして九月のある日,その新潟の友人宅に3人が集合した.ワタクシは電車で,彼女はバイクで.回転寿司で一緒に晩御飯を済ませるまでは良かった.しかしその後,友人宅に戻って酒を飲みながらした話が,いけなかった.
彼女は,次の日もまたバイクで青森まで戻らなければならないからと,となりの部屋で寝袋に潜った.一方ワタクシとその友人は,死んだ友人の一回忌に予備校仲間がまた集まった時の話で盛り上がった.あの晩,ダレダレが潰れてトイレの前で潰れてぶっ倒れていた,アイツは二日酔いで運転してた,あの野郎に至ってはエビ味噌(カニ味噌じゃなくて)を食いすぎて,翌朝はそのニオイだけで吐きそうになってた…等々,とにかく自分たちも含めて,集合した全員がオカシくなった夜だった,そんな話だった.
と,彼女が突然部屋の扉を開けて,言った.
「やっぱ今から帰るわ.」
帰ると言っても,夜中である.彼女の真意に全く気付いていなかった我々は,わざわざこんな時間に帰らなくてもいいだろう,夜中の運転は危ないし,明日の朝まで横になっておけよ,と当然と思われることを言ったのだが,そんな我々に構うことなく,彼女はさっさと出て行ってしまった.
そして翌日.ワタクシの携帯に,彼女からメールが届いた.


「友達,やめよう」


ワタクシはスグにメールを返す.
「どういうこと?」
「彼が死んだ日に吐くまで飲んでいたとは,貴方達の人間性を疑います」
「葬式じゃなくて,一回忌の後でなんだけど」
「同じことでしょう」
「ちょっと待て.アイツが死んだのは確かに凄く辛いことだが,それでも友達同士久しぶりに集まった機会に酒飲んで盛り上がったら,人間ちゃうゆーんか?」
それ以来,彼女からワタクシへの連絡は一切途切れた.ワタクシは1人,頭を抱えていた.
…続く.