vol.7

彼女と我々との間に生じた亀裂の原因は何なのだろうか.
まず何よりも,失ったものの大きさが違った.何よりも大切なものを失った者と,いくら仲が良かったとはいえ,今では年に2,3回会うか会わないかの友人をなくした者との違い.お互いの気持ちを理解し合うなど,そもそも不可能だ.
だが,それだけだろうか.
陳腐な表現だが,楽しい時に一緒に笑えて,辛い時に一緒に泣ける…そのような関係を持てるものが本当の仲間だというのは真実だと思う.そして浪人時代の一年を経て,我々は自分たちがそのような仲間を得た,と信じていた.
しかしあの晩――葬式の後に民宿で,彼女を前にして全員が沈黙してしまったあの瞬間に――我々は証明してしまったのだ.我々が彼女と共に苦しむことができない,という事実を.少しは彼女も我々に期待していただろう,傷ついた心を休める受け皿としての役割を.だが彼女を受け容れよう,という意思を示す者はいなかった.本当に困った時に力になってくれる仲間は,そこにはいなかったのだ.


幻滅――.


彼女の頭の中には,きっとこの二文字が浮かんでいたことだろう.
ではこの事態を防ぐことができただろうか.ワタクシは,可能だったと結論する.あのとき,ワタクシが言いかけて飲み込んでしまった言葉がある.


「すまん.お前の失ったものは大きすぎて,俺らにはお前の気持ちを分かってやることはできん.できんけど,やっぱり俺らも辛いねん.だから今夜は,一緒に泣こう」


もしも誰かが,このような言葉を代表して言うことができたなら,彼女と我々との間の信頼関係が壊れてしまうことはなかっただろう.そしてワタクシは言うべきことを知っていながら,言わなかった.少しの勇気が,足りなかったのだ.


ベストを,尽くした…?


尽くしていない.ワタクシはこの時,明らかにベストを尽くしていなかったのだ.そこに考えが及んだ瞬間,当然ながら「自分はベストを尽くしたのだから,こうなったのは仕方がない」という論理は崩壊した.
では,新潟の友人宅での出来事は,ワタクシの行動次第で未然に防ぐことも可能だったのではないだろうか.
…続く