vol.7

では,新潟の友人宅での出来事は,どうして起こってしまったのだろうか.当たり前すぎることだが,まずワタクシが新潟で三人落ち合おう,という誘いを掛けたからである.では,ワタクシはなぜ,彼女を他の予備校仲間に会わせたかったのだろうか.それは,彼女も含めた予備校の仲間たちが,また一緒に楽しく笑えるようになればいい,と思っていたからである.
ここまで考えが及んだとき,ワタクシは違和感を覚えた.自分の考えは,何か,どこか,おかしい…?
そして気付いた.「彼女と予備校仲間がもう一度,一緒に笑えるようになればいい」と思っていたのは誰か,ということに.


「自分」が,そう考えていたのだ.彼女ではなく――


結局のところ,ワタクシは自分の願望という枠の中に,彼女を嵌め込もうとしていたに過ぎなかったのだ.葬式の晩,そして彼女が電話を掛けてきたとき,彼女の苦しみを一瞬でも,少しでも,軽くできないかと思っていた.そしてずっとそう思っているはずだった.そう信じていた.だがいつの間にか,ワタクシの考慮から彼女の視点や気持ちといったものが抜け落ちてしまうようになっていたのだ.実際,彼女が「もう信用できない」と断罪した予備校仲間達と再び仲良くなりたいと思っていたかどうかは,疑わしいと考えるのが妥当だろう.
では,なぜ,どのようにして,ワタクシはそのようになってしまったのだろうか.
…続く.