vol.14

そして31日.大晦日.朝から雪が降っていた.
静岡までのドライブに仙台の友人も同行することになったので,JRのとある駅に集合することにした.ワタクシも友人も時間までに到着していたのだが,彼女からは遅れますメール.それを見て思わず苦笑した.そう言えばいつも遅れて来てたっけな….
雪の中で10分ほど待っていると,改札の向こうからパタパタと走ってくる姿が見えた.そう,いつも遅れてきて,ポケットに手を突っ込んで,えへへと笑いながら走ってきて.そして,今日も決まって,言うのだろう.


「へへへ,ごめーん」


でもその表情を見て安心した.四年半の空白が,あっという間に曖昧になっていく.ワタクシも彼女も,過去に何事もなかったかのように話し,聞いた.
「ほな行こか」
と車に乗り込む.と,彼女はワタクシが車に積んできたCDに目を通して見て
「これ聞いていい?」
「これ貸して」
「これも」
「はいはい何でも持っていって下さいよ,どうせオレはあと10日でまたアメリカやし,帰ってくるまでそいつらは用なしですからね」


そして雪の降りしきる高速道路を走る.雪のせいと,帰省のなか温泉旅行なのか分からないが交通量が多いのとで,そこら中渋滞していた.だがそれがありがたかった.いくら今この瞬間に昔と同じように話しているからと言って,空白の4年間が消えてしまうわけではない.積もる話ならいくらでもあったのだ.


だが,友人が予備校仲間の話を口にした時,途端に空気が重くなった.ワタクシはさっきまでの空気をぶち壊されて正直少し腹が立ったが,今こうして彼女と話が出来るのは今まで彼が連絡を取り続けてくれたお陰だし,彼がそうし続けた理由に一つには「彼女が予備校仲間と,また昔のように元通りに」というのがあったわけで,それは仕方がなかった.
そして話を進めるうちに明らかになったことは,実は先日の同窓会に彼女が来なかったのは,仕事の都合が悪くなったからではなかった,ということだった.
…続く