サクラは散るからこそ?


ワタクシは,別れの時に「でも,もう二度と会えなくなるわけじゃないから」と言うことに少し違和感を感じる.無論もう二度と会えなくなるよりは遙かにマシなワケだが,それは別れの気分を打ち消すには圧倒的に足りない.仲間が去っていく,ということは毎日の生活の一部が欠けていくということだ.「昨日の日記読んだ?」という電話を掛けられなくなる.忙しい一週間を乗り切って「今夜は自分にご褒美やから付き合え」と飲みに誘えなくなる.カレーが上手くデキても,食ってもらえなくなる.別れとは,そういうことだからだ.
「桜は散るからこそ美しい」という言葉は確かに正しいと思う.「人の生もまた,死があるからこそ…」という言葉にも説得力はある.しかし,「出会いは,別れがあるからこそ楽しい」とは言えないだろう.


いくつかの死別を含め,沢山のものを失ってきた.その度に,ああしておけば良かった,こうしておけば良かったと悔やんできた.それで,今の時間を,今の仲間を大切にする態度が身に付いた.簡単に言えば,楽しめる機会は逃したくない,楽しめる時に徹底的に楽しみたい,というだけのことだが.
だが,そこには一つのパラドックスがある.その仲間と過ごした時間が楽しければ楽しいほど,別れが辛いものになってしまうということだ.


当たり前だが,別れが辛いからもう他人と深く関わるのはヤメにしたい,などと思っているわけではない.何かの機会に再会した時には思い出話で大いに楽しく盛り上がれるし,この先もまた新しい出会いがあって,またその新しい仲間と楽しい時間を作り上げていくことができる.そうでなくては,人生は幸福とは言えない.


でも.


だけど.


幾らそれが事実でも――


今日一日は,感傷的な気分に浸らせて欲しい.