自分に敵意を持つ相手をすら納得させるように書きなさい

本日もボスとみーちんぐである.ボスが手を入れたワタクシの原稿を渡される.




 まー見事に まっかっか である


ワタクシはコレでも分かり難いコトを分かり易く説明したり,面白くないコトを面白く書いたり話したりするコトには自信がある.今回の原稿も自分ナリに良くデキたほーだとは思っていた.しかし「ココはこーゆー書き方をしなさい,ココはもっと説明しなさい,例えば…こんな風に書くのはどう?」とゆーボスの書き込みに従った方が圧倒的に分かり易く,面白い.このチガイはドコにあるんだろうか.才能か,それとも経験か?とか思ってたら,ボスはコンナコトを言った.


「別にアナタのクビをカラダからチョン切ってやろうとしてるワケじゃないのよ.Reviewer(ジャーナルに投稿された論文原稿は一旦その分野に詳しい他の研究者二人(reviwer)に送られ,二人ともが賛成すると掲載される.二人とも反対なら却下.一対一の場合は三人目のrevieweに送られる)はアナタを抹殺したがってると思いなさい.彼らだって出世したいと思ってるの.そのために他人の足を引っ張るコトくらいカンタンにやるわ.もしアナタの論文に曖昧なトコロやイイカゲンなトコロがあったら,彼らはカンタンにRejectデキるのよ.そんな連中でもナットクする以外にどうしよーもナイよーな書き方をしなきゃイケナイのよ


ソコか!ワタクシとボスとの間には,論文に取り組む態度に根本的な違いがあったのだ.「分野外の人間にも分かるように書こうとする」のと「アラ捜しをしよーとしても匙を投げるしかナイよーに書こうとする」のでは,許容レベルが圧倒的に異なる.ボスは続ける.


「ソレから,アナタはまだ自分のデータから引き出せる結論を出し切っていないわ.アナタのデータを見た他人に,アナタ以上の結論を引き出されたくないでしょう?


そのとーりだ.ワタクシが自分のデータから「面白い結論」を引き出したトコロで,ソレを見た人間が同じよーな実験プラスアルファで「もっと面白い結論」を公表すれば,世間の評価はソッチに奪われてしまう.ワタクシにはツメが甘いトコロがあるが,気を付けなければ致命的になる可能性がある.


そーだった.ワタクシはそーゆー競争の激しい世界にいるんだった.あらためてボスの凄さを知った気がした.このヒトは勝ち抜いてきたヒトなのだ.そして今,超一流の位置にいる.


…できるだろうか.


一瞬そう自問しかけて,スグに打ち消す.確かに,敵意ある相手さえもが納得せざるを得ないように書いたり,自分のデータから他人に出し抜かれる余地がない結論を引き出したりするなんて,カンタンにデキるコトではナイ.だが改善の余地がある以上,努力を怠らなければ少しずつでもデキるよーになっていくハズだ.そしてもしソレがデキるよーになれば…


自分も一流になれるかも知れない――


モチロン,才能が足りなくてムリかもシレナイし,一流でなくたって別に不幸ってワケじゃナイし,一流になるコト自体に,特に意味があるワケでもナイ.でも自分にもその可能性があるかも知れないと思うダケで,ゾクゾクしてくる.カラダの内側からものっすごいエネルギーが湧いてくる.自分は今日,モノスゴくタイセツなコトを学んだのだ.そして今,マッカッカの原稿に向き合いながら,論文を書き直している.


眠れない.寝るヒマもナイんじゃなく,単純に寝たくナイのだ.