伝えたい,と思った

告別式の遺族代表の挨拶はアンタやってな,とお袋に言われて,少し考え込んだ.
形式通りの決まり文句ばかり並べた挨拶なら簡単だが,それじゃ参列して頂く人々にとっても聞く価値も何もあったもんじゃない.祖母は恋愛こそドエラく大胆だったが,普段の生活は本当に控えめで,自分について語るようなことは殆どないヒトだった.つまり,祖母はワタクシの地元で60年近くを過ごしていながら,実際に付き合いのあった人々は祖母の人生や生き様を殆ど知らない状態だったのだ.孫達でさえ,祖母のことを大して知ってはいなかったのだから.


ワタクシはお袋に言った.
「フツーの葬式では考えられんよーな型破りな挨拶になってもええか?」


好きにし,とお袋は短く答えた.