久しぶりにきたな.

id:ain_edからトラックバック.普段は単なるエロバカ日誌だが,チョット本気で書くと良質な文章を書きやがるぜ.
今回は正社員と契約社員,比べてどーよ的なテーマで書いているが,実は博士号を取った研究者だって似たようなモンである.卒業してスグに停年まで保障されたイスを用意してもらえる研究者なんて数えるほどしかいない.ほとんどは2〜3年という短期契約の下でバシャウマの如く働かざるを得ない「ポスドク」とゆーポジションからスタートする.給料はイチニチ1万円,無論ボーナスなどナシである.そしてその2,3年という限られた時間に結果を出せなければ,次のポジションを得られない.ワタクシが歩こうとしているのは,そーゆー道なのだ.

・・・と書くと,何だかスゴく厳しい世界である.ワタクシなどは別に,もしちゃんと結果が出せなくて研究の道が閉ざされてしまったとしても,居酒屋の店長とかやってれば何とか食っていけるだろなんて思っている.だから,プレッシャーなんてほとんど感じていないのだが,隣の研究室にいる同期のヤツは随分と不安を抱えているようだ.昨日はその彼と彼の後輩たちが飲み会をやってるトコロへお邪魔したのだが,彼は


「もし中央(国の研究機関のことね)からハジかれたら,一生地方でやってくしかなくなるんやで.そんなんなったら,もう二度とやりたいこととかできへんやろ?そんな弱肉強食の世界で生き残っていくにはどーするか,そのへんが問題やねん」


と後輩にアツく語っていた.ワタクシはワタクシで,


「別に今自分が言ってる『やりたいこと』なんてさ,大学時代のたった5年間で得られた情報の中から選んでるに過ぎへんやろ?自分の知らん世界に行ったらまた新しい情報があってさ,そーゆーのに触れたら『おっと,世の中にはまだまだこんなオモロイモンがあったんや』って思えるようになるっちゅーねん.中央のエリート街道からハズれたら人生終わりやみたいに考えんでええやん.ハズれたらハズれたなりの生き方があるって」


「そやけどこんだけ一生懸命今までやってきてんから,やっぱりエリート街道歩きたいやん」


「別に今までの努力なんて必ずしも報われるとは限らんし,例えば1000円の品物を買って1000円払っても,それが必ずしも1000円分の価値を自分にもたらしくれるとは限らんやろ?努力も一緒やって」


とか言ってたら,最後には


「オマエは結果も出てるし次の行き先も決まってるからそんな余裕をカマせるんやろ,強者の論理っちゅーヤツや」


と言われてしまった.やれやれである.


実際のところ,ワタクシには結果があるから心に余裕があるんだ,という言い方は正しくなくて,ワタクシが結果を出せるのは心に余裕があるからだ,という方が多分当たっている.そしてワタクシの余裕の源はと言うと,ワタクシはいつも自分が失敗する可能性を考えるんだが,「失敗したらどーしよー」とは考えない.「失敗したときはどーすれば何とかなるか」とゆーオプションを常に用意しているだけである.当たり前だがワタクシにとって「ナントカなる」とゆーのは,「楽しく生きれる」とゆー意味である,念のため.


最後に,「老子」の中で紹介されるエピソードで,ワタクシが大好きなモノを一つ紹介しておこう.


ある男が孔子のトコロへ言って,聞いた.
「センセイ,こないだワタクシは川の渡し守に対岸まで届けてもらったんですが,その渡し守の舟の操りがミゴトなもんで,雨で増水した激流の中をいとも簡単に進んでいくんですよ.で,ワタクシがその渡し守に『どーやったらそんなに舟の扱いが上手くなれるのか』と聞いてみたら,渡し守は『泳げる人間なら,すぐ上達するよ』なんて言うんです.センセイ,これは一体どういうことですか?」

孔子は答えた.
「泳げる人間は,舟から落ちたときの心配をせずに練習できるからだ.泳げない人間は,舟から落ちたときのことを思うと恐怖で体がすくんでしまう.それだけのことだよ」


らららー.