読破
- 作者: 鷲田清一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1996/07/19
- メディア: 新書
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胃袋の存在を,普段人間は意識していない.胃が荒れて痛み出したときに初めて意識するのである.自分も同じ.揺るがされたときに初めて「自分とは何か」という問いを意識する.しかし自分とは所詮他人や周囲の環境との関係によって作り出されたもの.相対的なものだ.どんなに必死になって探そうが,探しているのが自分の中である限り,答えは出てこない.自分とは,「他者にとっての他者」なのだ.
この本の中に,面白い問いがあった.
1.学校が終わって出てきた息子に向かって,迎えに来た母親が両手を広げて言った.
「お前はお母さんのことが好きかい?」
子供は「うん,好きだよ」と言い,母親の腕の中へ飛び込んでいった.
2.学校が終わって出てきた息子に向かって,迎えに来た母親が両手を広げて言った.
「お前はお母さんのことが好きかい?」
子供はしかし,立ち止まったまま「嫌いだよ」と言う.
すると母親は「そうかい.じゃあ帰るよ」と言って
さっさと家へ向かった.
3.学校が終わって出てきた息子に向かって,迎えに来た母親が両手を広げて言った.
「お前はお母さんのことが好きかい?」
子供はしかし,立ち止まったまま「嫌いだよ」と言う.
すると母親は息子の顔を引っ叩き,
「生意気を言うんじゃないよ!」と怒鳴った.
4.学校が終わって出てきた息子に向かって,迎えに来た母親が両手を広げて言った.
「お前はお母さんのことが好きかい?」
子供はしかし,立ち止まったまま「嫌いだよ」と言う.
すると母親は息子に歩み寄って抱き締め,言う.
「分かってるよ,お前は母さんのことが好きだって」
さて,1〜4の母子の関係において,いちばんヨサゲ?どれがいちばんヤバそげ?