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大家はカリールの言葉には半信半疑だったが,それでも警察を呼ぶことにした.しばらくすると一台のパトカーがやって来た.そのパトカーから若い警官が降りてきて,エヴァンの部屋へ案内しろと言った.
警官は大家から部屋の合鍵を受け取り,カリールと共に家の二階へ向かう.しかしエヴァンの部屋は内側からロックされていて,外からは開けられなかった.警官はカリールに向かって,ドアをぶち破ってくれと言った.
カリールが何でオレが,と聞くと,
「許可がないので私には侵入す権限がない.もし今ドアを壊して,彼が生きていた場合,警察が訴えられてしまう」
その答えにかリールは一瞬唖然としたが,分かったよ,と言ってドアに体当たりをした.しかし二,三回繰り返しても鍵は壊れず,結局警官が自分でドアを打ち破った.警官はすぐに銃を構えて


「Police! Don't move!!」


と叫んで部屋を見渡したが,点けっぱなしのテレビと空のベッドしか見当たらない.しかしゆっくりと体の向きを変えいってクローゼットに視線が移ったとき,警官はあっと息を呑み,体を硬直させた.


そこには,ジョージアの夏の高温と多湿で腐敗の進んだ,エヴァンの体がぶら下がっていた.高さ160cmほどのクローゼットの中に,身長190を超えるエヴァンが釣り下がっている光景は,異様だった.


警官はしばらく呆然と立ち尽くしていたが,はっと我に返るとカリール達を部屋から追い出し,市警本部に連絡した.学生ばかりが住む平和な小さな街では,自殺も珍しいのだろう.家には何十人もの警官がやって来た.


「...this is what happened today」


カリールの話を聞きながら,ほぼ同じ時期に坊主頭にして,Now we are brothers, man!と言って笑ったエヴァンの顔と,その顔が腐敗してボロボロになっていく様子を想像した.


Why did he do that?


・・・続く