告別式場は街から少し外れたところで,五分くらいで着いた.車から降り,ジェフと並んで中へ入っていく.お悔やみの言葉を英語でどう言えばいいのだろう,そんなことを考えながら建物の廊下を歩き,部屋の中へと足を進めた.


違和感があった.


中は,まるで立食パーティーの会場だった.参列者達はグラスを片手に談笑している.そして,誰もエヴァンの話をしていなかった.
部屋の奥を見た.エヴァンの遺灰が入った壷と,彼の写真があった.そしてその前には,誰もいなかった.


次から次へと,いろんな人が話しかけてきた.みんな笑顔だった.僕は混乱した.この場で,自分がどう振る舞い,どんな話をすればいいのか全く分からなくなってしまった.僕は生返事を繰り返し,ただ呆然と辺りを見回していた.と,不意に後ろから声を掛けられた.誰よりも明るく,大きな声だった.


「Hi, how are you?」


振り返ると,そこには一目で誰だか分かる顔があった.


「I'm Evan's father.」


エヴァンの顔に皺を描いて,髭を付けたらこうなるだろうな,という顔だった.だがその父親の表情は,僕を虚無の底へと突き落とすのに十分だった.


・・・続く