読破

生物から見た世界 (岩波文庫)

生物から見た世界 (岩波文庫)

生物は自身の周囲を取り巻いている環境の中から,自分にとって意味のある信号のみを知覚し,世界を形成している――
ダニに視覚はなく,明暗の違いを知覚できるのみである.嗅覚は獲物である哺乳動物の体から放たれる酪酸以外の化学物質を知覚することはなく,体毛を掻き分けて地肌に到達するための触覚,それに,そこが動物の体表面上であるかどうかを知覚するための温度覚があるのみである.味覚はなく,だから37℃の温水の入った風船の上にダニを乗せると,彼は温水をお腹いっぱいに吸い入れる.ダニには,数ある環境刺激のうちから,獲物に到達するのに必要な感覚以外のものは一切知覚されないのである.
そんなこんなで,生物には世界がどのように知覚されているのか,という話が次から次へと出てきて,昆虫の「死んだフリ」が敵を逃れる上でどれほど合理的な行動であるかとか,鶏の不思議な威嚇行動とか,とにかく「面白い!」と思えるエピソードが多数.ファーブル昆虫記並みに面白かったかも.いや,それとはまた全然レベルが違うんだけど.