読破

ドーキンス VS グールド (ちくま学芸文庫)

ドーキンス VS グールド (ちくま学芸文庫)

淘汰は,一つ一つの遺伝子に作用する.個体の環境への適応度を高くする遺伝子が残り,低いものは淘汰される…というのが「利己的な遺伝子」で有名なドーキンス


淘汰は「種」レベルで起こる.ある種の生物が絶滅しやすいかし難いかは,その生物が持っている基本的な特徴による.確かに自然選択はその生物の環境への適応度を高めていく働きをするが,生物が絶滅するときには急激な環境変化が伴うため,それまでの適応度よりは,新しい環境に適する性質を「偶然に」備えていたかどうかの方が重要となる.また,生物が持つ形質のほとんどは,自然選択では説明できない.なぜ目は二つなのか,なぜ指が五本あるのか・・・それらを,環境への適応という観点から説明することは不可能だ.・・・などが,進化生物学の世界で論争を巻き起こしたグールド.


二人とも生粋のダーウィニストだけど,二十世紀の終わりごろ,この二人はガチンコの論争を繰り広げたのでした.それをスッキリ上手くまとめたこの本は,好著です.
ドーキンスが科学の絶対性を信じる典型的なサイエンティストであるのに対して,グールドは科学に対して懐疑的な態度を取っている.著者も,巻末の解説者も,あるいはそこらへんの書評でも,みんなドーキンス寄りの意見なんだけど,僕はグールドを支持.科学の力を疑わない科学者って,やっぱ好きじゃない.