読破

日本という方法 おもかげ・うつろいの文化 (NHKブックス)

日本という方法 おもかげ・うつろいの文化 (NHKブックス)

まずタイトルが面白い.「日本の方法」ではなくて,「日本という方法」.Japanese Methodではなく,Japan is a Method というわけ.外から入ってきた文化を独自かつ巧みに編集し直して新しい文化に仕上げてしまうところにこそ,日本の特徴があるという話です.


筆者が好きな喩えは「たら子スパゲッティ」.30年くらい前にはスパゲッティなんてミートソースとナポリタンくらいしかなかったのが,10年前あたりから街中にはイタリアレストランが立ち並ぶようになり,そして気が付いたら「たら子」と「スパゲッティ」が絶妙に編集されている.しかも,店によってはスパゲッティでも箸で食べる.これぞ日本.


とまあ,構造的にはそういう例を次々と出してくれる.日本語,仮名文字,神仏習合など,日本の歴史と文化を一気に通り抜け,日本が如何にして二つ以上の相矛盾したものを,対立させることなく包摂してきたかを筆者ならではの縦横無尽の知識を繋ぎ合わせて解説してくれる.二項対立ではなく「二項同一」.或いは「絶対矛盾的自己同一」.
例えばお寺の唐門なんかで見られる,「てりむくり」という屋根の形.漢字で書くと「照り起くり」.照り,というのは下向きに反り返っていることで,起くりは逆に真ん中が立ち上がった形を言う.元々は「照り屋根」と「むくり屋根」の二種類が別々に存在したのだけど,構造上の問題である程度以上の大きさには耐えられない.そこで,この形態的には真逆の構造を,日本人は見事に組み合わせてしまう.それで,両端が反り返っていてかつ真ん中が立ち上がった「てりむくり」が生まれた.
みなさん,今度唐門を見るときは是非その形に注目しましょうね.