読破

ベルクソン~人は過去の奴隷なのだろうか (シリーズ・哲学のエッセンス)

ベルクソン~人は過去の奴隷なのだろうか (シリーズ・哲学のエッセンス)

独自の生命論・時間論で現代フランス哲学の潮流を作った人物.その流れはジル・ドゥルーズに最も色濃く受け継がれる.正直言って難解だが,例えば意識について,脳科学なんかでなされる「シナプスを介した神経間の電気信号の伝達」という科学的な説明だけでは,説明し切れず,必ず取りこぼしが生じると(無論,科学的説明の威力は認めた上で)批判するあたりは,科学者である僕にも容易には反論できない.
いちばん面白かったのは「現在において,人は何も知覚してはいない」という命題.そんな馬鹿な・・・今僕は自分のPCを見ているし,キーボードを叩いている.これは今僕が,現在を近くしている何よりの証拠じゃないのか・・・というのが普通の反応.でも,ベルクソンは言う.
「現在において,人は過去の記憶を確認しているだけである」
うわっ.そうか.いつも繰り返し見てるものって確かに僕らはちゃんと見ない.変化があっても,気付かないことってよくある.いつも通る道にあるお店が,いつの間にか潰れていたり.いつも見ているのに,見えていない.単に,過去の記憶を再現して「見たつもりになっている」.まさに,「現在は,押し寄せる過去の中で溺れかかっている」・・・
だが,生命の力は「変化」にこそある.絶えず変化し続ける生命を体現することこそが生きるということなのだ.「同じ」ではダメなのだよ!
うむむ,道元西田幾多郎とも通じるところがある気がする.