読破

西田幾多郎の生命哲学 (講談社現代新書)

西田幾多郎の生命哲学 (講談社現代新書)

西田幾多郎の哲学を,ベルクソンドゥルーズの「生の哲学」と対比させながら読み解く書.
生命とは,否応なく作られたものである.作られたものでありながら,自らを作るものである.のみならず,世界を作るものである.
生命体は,作られたものとして世界に生ずる.作られた生命はしかし,周囲の物質を取り込み,自らを作る.作り変えていく.「適応」という生物現象を見る限り,生命は環境によって作り変えられるようにも見える.しかし逆に,生命活動そのものが,環境へ作用することもまた不可避なのである.「オートポイエーシス」の河本英夫は,それを「二重作動」と呼んだ.
生命(個体)と環境(世界)の相互作用(限定),そして生命(個体)と生命(個体)とが相互作用(限定)することによってのみ,個は個であり,世界は世界である.一即多,多即一.主観即客観,客観即主観.世界と個体は,そして自己と他者は,お互いに絶対に相容れないものでありながら,しかし既にお互いを含み込んでいる.世界なくして個はあり得ず,個なくして世界もない.自己あっての他者であり,他者なくして自己はあり得ない.矛盾したものが,矛盾したまま同一である.絶対矛盾的自己同一.

何にせよ,やはり西田の思考の展開は余りにもスリリングだ.