読破

ひとを“嫌う”ということ (角川文庫)

ひとを“嫌う”ということ (角川文庫)

確かに,世の中には「ひとを嫌ってはいけない」という風潮がある気がする.少なくとも,「○○が嫌いだ」と言うことは道徳的に誉められたことではないとされ,器の小さい人間だというマイナスの評価を喰らう.
確かに,「嫌い」は人を傷つける.誰かから面と向かって「お前なんか嫌いだ」と言われたら平然としていられない.でも,だからと言って,真実から目を背けてはいけないのではないか.
その真実とは「人は誰かを好きになるのと同様に,必ず誰かを嫌いになるし,誰かから嫌われる.それも,ほとんどの場合が究めて理不尽な理由で」ということだ.僕が話をしたいと思っても,相手は僕と話したくないことはあるし,僕と話をしたいと思ってる人全員を,僕は好きなわけではない.僕が好意を持っていても,相手には嫌われることもあるし,僕という人間を好きだという人の中にも,僕にとっては一刻も早く目の前から消えて欲しい人もいる.
それが自然なのだ.だけど世の中には,「嫌い」を覆い隠してしまう人がいる.「人を嫌ってはいけない」という倫理を自分に押し付けていて,だから自分が誰かに対して嫌悪感を抱いてしまったとき,その「嫌悪感を抱いている自分」を責める.そしてその誰かを嫌う代わりに,自分を嫌いになる.
「嫌い」から目を背けていると,その「嫌い」はどんどん大きくなり,やがて手の付けられない「憎悪」へと成長してしまう.それはさすがに良くないから,もっと「嫌い」を正面から受け止めて,徹底的に考え抜いて,合わない他人とは「適当に」嫌い・嫌われ合う関係を築きましょうよ,その方が断然人生は豊かになりますよ,というのが本書の趣旨.
正直,僕自身何度も考えたテーマであるので分かり過ぎるくらい分かりやすかった.