詳述1:ain_ed家を訪ねて

小田急線秦野駅から2度の乗換えを経て,さいたま新都心駅に辿り着く.東京近郊の街では,東京まで出るのはラクだが,東京以外の街へ行くのは結構大変だ.連絡を入れると,ain_edは「改札を出て右側にあるエスカレーターを下ったところで待ってる」と言う.おーそうかよし分かったと思って駅の改札を出て右を向くと,下りのエスカレーターが3つあったのだった.・・・もしもし,どのエスカレーターですか?

迎えに来てくれたain_edに彼女を紹介し,車に乗る.座席に着いて直ぐ,その日同席する予定だったブーマーくんとその彼女について訊く.彼ら今日は来れないの?ってゆーかその後どーなったの?落ち着いたって聞いたけど結婚したってこと?
「いや,何か別れたらしいよ」
えーっマジで.スゲーいい彼女だと思ってたのに.
「でもブーマーくんの家でプリン食おうと思ったら,フォークしか出てこなかったらしくて,『何でこの家にはスプーンがないのよっ!』ってキレられて大喧嘩したって話だったよ.んで彼女がフォークを投げつけて,そのフォークが曲がったとかでまた喧嘩したって」
もう爆笑.どんだけ下らない喧嘩ですか.つーか,どんだけプリン食いたかったんだよ.
ain_ed宅に着くと,ナオミが迎えてくれた.
「あっ可愛いじゃーん!アタシ嘘吐けない性格でさー,可愛くない人に向かって可愛いって絶対言えないのー,だからけんけんの彼女が可愛くなかったらどうしようって思ってたんだけど,思ってたより全然可愛いよー,良かった〜」
思ってたより,って,一体どんなん予想してたんだよ.
「いやー学のある人って,やっぱそういうイメージあるじゃん?」
しかしナオミは相変わらず胸デカいよな〜,何カップ
「いちおーFあるんだけど.子供らに吸われる前はもっと大っきかったんだよ?」
Fuckin'カップか.最大時でどんくらい?
「あの頃はHあったね」
Hentaiカップかよ.こっちの彼女さんはギリギリB!やっとこさB!
「言わんでええねん,そんなことは!」

そんな会話をしながら,ain_edがカルボナーラとトマトソースを作ってくれるのを待つ.3年近く前の,僕の誕生日に入籍した二人だったが,今では二人の子供が産まれ,発情期を迎えたメス猫もいて,その場所には完全に「家庭」のオーラが漂っていた.それも「幸福な家庭」のオーラだ.確かに僕と彼女を見れば,100人中100人が「仲の良いカップル」と言うだろうという自信はあるけれど,彼らにはまだ敵わない,と言わざるを得ない.
スパゲッティは美味かった.メス猫ルイには引っかかれた.僕が差し出した手に向かってルイは猫パンチを繰り返していたが,別に痛くもないのでそのまま平然としていたら,本気になってしまったらしい.何回目かの猫パンチを振り上げた際,手の先にキラリと白く光るものが・・・爪だった.僕の手の平は見事に裂け,流血の事態に.ネコにさえモテないのですか僕は,と凹んでいる僕に,ナオミは
「発情期だから警戒してるんだよねー」
と言ったが,それは益々ダメな気がした.オスとして.
「そーそー,けんけん今夜はこれが必要でしょ?」
と言ってain_edが冷蔵庫から出してくれたのは,リポビタンD2000だった.おお,スゲーありがたいよ,さすがだな!と言うだけ言っておいて,結局飲み忘れて帰った.後で同じのを自分で買ったことは秘密だ.

それから,当日来れないと言っていたブーマーくんを強引に電話で呼び出し,大人と子供併せて7人で武蔵国一の宮氷川神社へ行く.ブーマーくんがリア・ディゾンと付き合えますように,という意味の分からない願い事を掛けて,解散.

帰りの電車の中,途中まで一緒だったブーマーくんが言った.
「ain_edさん,けんさんと出会ったあたりからすんごい変わってってるんですよ」
別に,僕が彼を変えたなどと自惚れるつもりはない.ain_edを最も大きな変化を与えた人物は,ナオミに決まっているからだ.だが,僕も彼も,「恋愛したくないわけではないが,上手く繋がれる相手がいない」という時期に出会った.そしてお互いの日記で「自分とは何か」「コミュニケーションとは何か」「恋愛に何を求めるのか」・・・そういうテーマで書き合ってるうちに,そしてお互いに触発されて多くの本も読んでいるうちに,自分の中で色んな物が深まっていったのは確かだと思う(少なくとも僕にとっては,そうだ).彼と出会ってから大きく変化している点については僕も同じだし,僕に最も大きなインパクトを与えた人間は彼女だ.だがもしain_edと出会っていなかったら,僕は彼女を見つけられなかったかも知れない.
同じような時期に生まれ,お互い大きな出会いと変化を経験する直前に出会い,そして変化の最中にもこうして交流を続けられる人物と出会えた幸運に,感謝したいと思う.