ライバル

と言ってもこっちが一方的に意識してしまうだけなんだけど.

R. Keith Slotkin.4年くらい前だったか,僕がまだVisiting Studentとして今の研究室にいた頃に,彼がPhD修了後のポストを求めてウチのラボを訪れたことがあった.その時に彼が行ったプレゼンの内容にスゲーなぁと感心していたら,間もなくNature Geneticsに掲載されていた.それから1年後,僕が書いた論文を,ボスはノリノリで同じNature Geneticsに投稿しなさいと言ってくれたわけだが,敢え無く撃沈した.それでもPNASに掲載されたから満足過ぎるほどだったわけだが.
そして今回,彼はまた僕の目の前で物凄い成果を発表をしやがった.聞けば,Cellに論文をアクセプトされたらしい.僕がこの2年近い期間に積み上げた研究成果だって,胸を張っていいものだと思う.実際,発表後の反響も上々だった.だが,Cellには届かない.そう思うと,妙に悔しくなってきた.いや,ハイランクなジャーナルに論文が掲載されることばかりが大切なことじゃないことくらいは分かっているのだが,何となくいつも自分の一歩先を行かれているような気がしてしまうのだ.

夜,Keithの大学院生時代のアドヴァイザーだったDamon Lischとホテルのバーで話していると,Keithが入って来た.Damonは彼を呼んで僕を紹介してくれた.
「Keith, this is Ken. Ken, this is Keith.」
するとKeithが握手の手を差し出しながら
「Keith. I know your work.」(キースだ.君のことは知ってるぜ)
と言う.クソッ,何てカッコイイことを言いやがるんだと思った僕は,
「Ken. I know yours, too.」
と言い返しておいた.一応火花を飛ばしてみたつもりだったんだが,いつかコイツに「知ってるぜ」ではなく「スゲーな!」と言わせてやりたいと思ったのだった.